カーボンニュートラルな車社会への天然繊維プリプレグ開発
人とくるまのテクノロジー展2021取材記事。
今回は、JMIA(日本自動車レース工業会)の会員企業、株式会社 童夢が取り組むBcomp社の天然繊維材料を活用した製品開発と、その天然繊維材料も用いて開発されたレーシングカー「童夢F111/3」を紹介する。
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レーシングカーの開発、製造、メンテナンスからカスタマーチームのサポートまで請け負う童夢では、数年前からスイスBcomp社の天然繊維材料をレーシングカーや自動車部品へ応用すべく研究、開発を進めている。
以前、童夢の記事でBcomp社の天然繊維材料について紹介したが、今日までに国内でのプリプレグ化とその製造、販売まで行える環境を整えてきており、さらにレーシングカー開発でもそのプリプレグを応用してくる等、着実にステップアップを果たしている。
当初は海外で製造されたプリプレグを輸入するプランを検討していたが、問題がいくつかあったという。
まず輸送にはプリプレグの冷凍保管が必要なため、輸送コストが増えてしまう事。
硬化条件と基準が違う為、童夢で使用する他のプリプレグと同じ様に成形出来ない事も判明した。
このままでは製品として採用できず、価格面でも普及の障害となってしまう。
そこで童夢では、天然繊維材料の知見を得る目的も兼ねて独自開発する事となったが、国内樹脂メーカーの協力も得られた事で国内でのプリプレグ化に成功。
Bcomp社とのパートナーシップの元、その国内製プリプレグを独自に販売出来るようになった。
現在販売中のものは、今現在で以下の一種類のみ。
【ampliTex5040】
綾織2/2縒り無し 幅(巾)1,000 mm 目付300g/㎡ 繊度300tex
詳細は童夢まで問い合わせ頂きたい。
ところでこの天然繊維材料だが、海外の自動車メーカーやF1、レーシングカー開発などで普及が進んでおり、ネットで検索すると多くの実績を垣間見る事ができる。
そして童夢でも、モータースポーツカテゴリー「Formula Regional Japanese ChampionShip(フォーミュラ リージョナル ジャパニーズ チャンピオンシップ)」向けに専用開発したレーシングマシン「童夢F111/3」に対し、国内製の天然繊維プリプレグを初採用している。
まずはダンパーカバー部、そしてボディカウルと段階的に使用の範囲を広げつつノウハウを蓄積し、いずれはカーボンニュートラル社会に向けたサスティナブル(持続可能)なレーシングカー開発を目指していくようだ。
童夢の調査分析では、数年内に国内での採用レギュレーション化が予想されるBcomp社の天然繊維材料は、その90%近くがampliTex品番5040と判明したという。
カーボンニュートラルな社会を目指し、多くの国や企業がその取り組みを進めている昨今。
時代の先を見越した開発をするなら、この天然繊維材料の採用を視野に入れるべきかもしれない。
【取材 –文】
編者(REVOLT-IS)
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日本自動車レース工業会(JIMA)
(株)童夢