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チューニングカー好き目線で見るスーパーフォーミュラ

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スーパーフォーミュラ2019 Rd.4 富士スピードウェイ取材記事。
今回は予選日の模様に密着。
一人のチューニングカー好き目線で感じた事をまとめてみた。

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まずスーパーフォーミュラについて簡単にお浚いしておこう。
日本のモータースポーツ最高峰と言えばスーパーGTとこのスーパーフォーミュラとが上げられるだろう。
始まりは2013年だが、その前はフォーミュラ・ニッポン、全日本F3000、全日本F2などと時代に合わせて名称、マシン、コンセプト、レース形式を変えながら続いてきた日本古来のフォーミュラカーカテゴリーとしてファンに親しまれている。
フォーミュラとは”規格”という意味で、主に以下の条件に合致しているレーシングマシンの事を指す。

・後輪駆動
・一人乗り
・タイヤ剥き出し
・屋根のない運転席(コクピット)

ちなみに皆さんご存知のF1(フォーミュラ1)はその規格の1番、No.1のカテゴリとなる。

これまで、全日本F3000あたりまでは世界のフォーミュラカーレースと歩調を合わせて開催されてきたが、フォーミュラ・ニッポン以降は日本独自のトップフォーミュラカテゴリー確立を目指す事となり、試行錯誤を重ねながら今日まで発展してきた。

過去、海外のレーシングカー開発企業であるラルトやレイナード、ローラ、Gフォース、マーチに、日本からも童夢、ムーンクラフトがマシンを供給した時代もあった。
その頃はエンジンも、無限・ホンダ、ヤマハ、フォード・コスワース、ジャッド、東名スポーツ、ケンマツウラレーシングサービスなどいったメーカー、チューナーが供給しており、タイヤもブリジストン、ヨコハマ、ダンロップ(住友ゴム)という日本のビッグメーカーが参戦しており、ドライバーだけでなくマシンやエンジン、タイヤの開発も激しさを増していたという。

だが、近年は開発コスト削減とドライバーやチーム力による勝負を重要視させようと、マシンとタイヤは一社が開発したものを全チーム使用する事になっている。
今現在はイタリアのダラーラ社が専用開発した車体を使い、タイヤは横浜タイヤADVANブランドで一社供給。
エンジンこそトヨタとホンダが専用開発したものを各チームが選択して使っているが、これはスーパーGTのGT500クラスで使われているエンジンと共通となっている。

その他、一定時間エンジンへの燃料流量をあげてパワーアップを図るオーバーテイクシステム(回数制限あり)や、一本以上のタイヤ交換義務付けなどといった独自ルールもあり、演出や戦略面でも知れば知るほど見応えの増すレース展開が繰り広げられている。

レース自体のレベルもかなり高く、日本では考えられないほど世界からの注目が集まっている。
全日本F3000の頃は世界から格下に見られ、F1に上がるには国際F3000やイギリスやドイツF3等での実績が重要とされたが、今のスーパーフォーミュラはF1に匹敵するほどの旋回性能、Gフォースがあると評価されており、F1にあがるためのトレーニング、実績を積むのに最適と、近年は多くの名だたる外国人ドライバーが参戦を始めている。

さて、おさらいはここまで。
では各チームの色々なマシンや作業風景を色々見ていこう。
なお今回はスーパーフォーミュラに加え下位カテゴリーである全日本F3選手権も併催されていたので、せっかくなのでそちらのチーム、マシンの様子もお伝えしていく。

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F1でのホンダの活躍もあってか、日本のモータースポーツシーンにもレッドブルのロゴが馴染んだ感がある。
そしてドライバーが座るコクピット全面には、2018年よりF1で導入が開始されたT字のロールバー”Halo(ハロ)”が見える。
ドライバーの頭部保護を目的したものだが、この案の発表当初は美観を損ねる、視界を妨げる、コックピットから脱出しにくい、などと否定的な意見が多かった。
しかしいざ導入してみると視界も気にならず、乗り降りも訓練で解決。
美観についてもデザイナーの工夫が効いているようで、今では不平不満の声は影を潜めている。

“Halo(ハロ)”はフォーミュラカーだけの安全装備でありチューニングカー等の箱車のレースやサーキット走行会では縁がないが、安全意識の考え方自体は見習うべきところ。
近年はアマチュアのサーキット走行会では、クラッシュ時の強い衝撃から首を守るHansデバイスの装着率が高まっている事からも、モータースポーツで何かあったときのドライバーの身の安全をどう守るか?
なぜ首をそこまで守らなければならないのか?
そういった事をこれらを見ながら意識してもらえると、より安全にサーキット走行を楽しめると思う。

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可能な限り多くのファンにアピールしたいと、各サーキットで催されるピットウォークではかなり近くまでマシンに接近する事も出来る。
中にはスポンサーアピール目的か、このようにフロントウィングをよく見せてくれるチームも。
もちろん全てが本番用セッティングではないだろうが、ウイングの立て方、形状からこの後の走行を予測してみるのも面白いと思う。
例えば雨でグリップが要求されるはずなのに、ウイングを思いっきり寝かせてあるのはなぜか?
メカニカルグリップだけで十分なサスペンションセッティングが見いだせたのか?
など、素人なりに色々想像できると思う。

また愛車のカスタマイズに凝る方なら、生で見たステッカーデザインや貼る位置、色のバランスを俯瞰でどう見えるかなどを研究して見るのも面白いだろう。

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チューニングカーでも使われるようになったゴールドサーモシートが見える。
エンジンからの遮熱が目的だが、チューニングカーではダクトやバッテリー、ボンネット裏に貼られているが、今回見たフォーミュラカーでは車体自体やカウルの裏側にも貼られていた。
このシート、市場には様々な製品が送り出されているが、価格も違えば品質も千差万別。
けどモータースポーツ業界で使われているなら、粗悪品という事はまずないだろう。
こちらで使われているものなら、愛車への活用も検討できると思う。

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ブレーキとハブ部分のアップ。
ブレーキディスクはカーボン製。
無数に開けられた穴が特徴的だ。
高温下での安定した制動力が得られ、スチールより軽量、歪みも少ないと良いこと尽くめのカーボンだが、一定の熱をいれないと制動力が生まれないため、冷えた状態でも制動力が求められるストリートカーには不向きとされている。
レース用ブレーキディスクは良く効くだろうとストリートカーに安易に装着してしまい、ブレーキが全く効かず事故が発生したケースもあったとか。

ただ近年は技術の向上、材料の見直しなどで一部スーパーカーには標準装備されつつある。
社外品として販売しているブレーキメーカーもあるので、拘りある方は検討してみるのもいいだろう。

次にハブの部分。
スーパーフォーミュラのタイヤ・ホイールはセンターロック方式。
真ん中の巨大な軸にホイールを装着し、後述のインパクトレンチでナットを締め上げていく。
F1などモータースポーツではお馴染みの光景であり、多くの方はその様子を見たことがあるはず。
さらにディスク側には、ハブボルトのような軸が八角形上に配置されているが、これが一般の車で言うところのハブボルトと同じ役割を果たす。
ホイール裏にこのボルトがはまる穴が無数にあり、ホイール脱着時にその穴にボルトを合わせこむことで、正確に正しい位置にホイールを装着する事が出来る。

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タイヤ・ホイールの装着に欠かすことのできないインパクトレンチ。
てっきりメーカー品をそのまま使っていると思っていたのだが、より使いやすいよう、各チームで細かなカスタマイズがなされている。
さらに必要があれば、近場の金属部品加工会社に持ち込んで加工したり、専用アタッチメントを作ってもらう事もあるという。

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こちらでは、タイヤやブレーキに風を当てるサーキュレーターが絶賛稼働中。
冷やすというより、適切な温度に保たせる狙いがある。
タイヤに巻き付けて一定の温度に温めていた通称”タイヤウォーマー”の利用が禁止されているので、こうした工夫などが必要になってくる。
これは比較的真似しやすいためか、チューニングカータイムアタックでも導入する方が出てきている。
もちろん溝無しレーシングスリックタイヤとSタイヤの違いはあるが、どちらも一発のタイムを狙っていくにはシビアな温度管理が必要という事なのだろう。

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そのタイヤだが、取材当日は雨もぱらついていたため写真の溝ありレインタイヤもスタンバイされていた。
一見一般のストリートラジアルタイヤのようで、そういえば似た溝のスポーツ系タイヤを思い出すこともある。

以前こちらの記事でまとめたが、レーシングタイヤもストリート向け一般タイヤも作り方は一緒であり、ゴムの配合やタイヤの構造といった各要素をレーシング寄りに振って製作されている。
もしかしたら、ここで試されたタイヤがストリート向けに再構築され、数年後に一般市場に出回ることもあるかもしれない。

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スーパーフォーミュラ全日本F3マシンの整備中の様子をいくつか並べてみた。
車体を浮かしたまま整備しやすいよう様々な治具が取り付けられているが、中にはアライメントを取りやすくする機能を兼ね備えたものもある。
これらも各チームで独自に用意されており、チーム内製もあれば、やはり金属部品加工会社に制作依頼したものもある。

もちろん、ただ固定すればいいというものではない。
扱いやすく、それでいてしっかりと水平に保たなければならないし、正確なアライメントを取るためには治具単体の精度も要求される。
ちょうど、治具を制作をした企業担当者とメカニックが話されている現場に遭遇したのだが、”ここをこうして欲しい”、”こうすればもっと使いやすくなる”といった意見交換が交わされていた。

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こちらでは下に潜って作業中な光景を目にしたが、なんとも寝心地の良さそうな寝板(メカニッククリーパー)を使っている。
見たところ、首の座る角度を調整できるようだ。
状況によっては長時間作業もありえるだけに、首の位置が安定しているだけでもかなり楽だろう。

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整備と言えば、どこのチームも大なり小なりピットが綺麗に整理整頓されていた。
よくある使った工具を投げっぱなしにしたり、外したネジを放置するようなところはまずない。
ピットが綺麗に整理されたところは整備の質も高く、不要なトラブルがなく勝率も高いと言われている。
実際いくつかのレースを見てると、確かにそんなチームが表彰台の常連になっているようだ。

整理整頓、仕事場を綺麗に保たせることはどの業界でも大事なこと。
つい怠けがちな編者は反省しきりだ。

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今度は走りを見ていこう。
写真はフリー走行中のアドバンコーナー立ち上がりだ。

鬼気迫る迫力ある走りを想像していたのだが、立ち上がり速度はとても速いものの、どちらかと言えば丁寧にグリップさせている印象。
いらぬスライドやブレーキロックは見られず、オン・ザ・レールでクリアしていく感じ。

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今度は後ろから見てる。
コーナーのRをなぞるように曲がっていくマシンもあれば、直線的に立ち上がれるようクリッピングポイントを奥側に取るマシンもありで興味深い。
ダラーラ・SF19は今季から各チームに提供されたニューマシンであり、このときは第4戦。
正解の走りやセッティングを掴みつつあるチーム、ドライバーもあれば、今だ試行錯誤なところもある。

少し話はずれるが、フォーミュラカーは速く走るために生まれたマシンであり、ご覧の通り車高は路面に接触するほどまで下げられている。
そして空力効果で車体を路面に押し付ける力を高めるためには、一定の車高を保つことが理想。
その理想追求のため、昔のF1マシンではサスペンションをガチガチに固めたものもあったくらいで、それだけフォーミュラカーの世界で空力の重要度が高いと言える。
そんな空力効果を少しでも得ようと、チューニングカータイムアタックでもフォーミュラカーのようなウイングを付けたり、サスペンションからフォーミュラカーっぽく作り変えて車高をベタベたに下げているマシンが出始めている。

最新フォーミュラカーのトレンドがチューニングカーへ。
これから寒くなるとチューニングカーのタイムアタックシーズンに突入する。
そのときに登場するチューニングカーとフォーミュラカーの空力を比較してみるのも楽しそうだ。

【取材 –文 – 写真】
編者(REVOLT-IS

【取材協力 – 問い合わせ先】
富士スピードウェイ
スーパーフォーミュラ事務局