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箱レースバトル再び – TCR Japan 2019 (予選&レース編)

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今、世界でもっとも熱いツーリングカーレースと言えば、TCR規定の車両で争われているスプリントレースだろう。
世界戦として開催されているFIA WTCRを頂点に、ヨーロッパシリーズのTCR Europe、アジアシリーズのTCR Asia、中東シリーズのTCR Middle East、その他世界各国でTCR規定を導入したレースが20以上開催されている。

そして日本も、2019年からTCR規定のツーリングカーレースを新たにスタートさせた。
その名もTCR Japan
前回の記事ではマシンについてまとめてみたが、今回は実際の走りやレースを見ながら、TCR Japanの面白さを探ってみたいと思う。

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TCR Japanシリーズは、国内モータースポーツ最高峰のスーパーフォーミュラのレースイベントに組み込まれる形式で開催されている。
今回もスーパーフォーミュラ第4戦のサポートレースという扱いだったのだが、お客の注目度は予想以上に高い印象。
ピットウォークタイムでもピットは一コーナーよりとかなり離れていたのだが、それでも多くの方が足を運んでいた。

個人的には間近でカッコいいマシンを眺められたのが良いと感じたが、スーパーフォーミュラに負けず劣らず、こちらでもドライバーのサイン会やレースクイーンの撮影タイムも行われており、レースファンには堪らなかっただろう。
かなりの盛況ぶりだった。

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こちらはTEAM GOH Modelsからホンダ・シビック TCRでエントリーしている金丸ユウ選手。
これまでに優勝と3位を獲得しており、今回も優勝候補の一人に数えられている。
金丸選手は、これまでF3などのフォーミュラカーの経験ばかり積んできた事もありFFレーシングカーをどのように乗りこなしていくか注目を集めていたが、何度も優勝争いに絡んでいるところを見ると上手くアジャスト出来ているようだ。

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あらためてTCR Japanのレースについて簡単におさらいしておく。

TCR Japanの特徴の一つと言えるのが参加ドライバーで、まずプロドライバーの参加が認められていない。
国際自動車連盟FIAでは、モータースポーツへ参加するドライバーを取得ライセンス、成績、年齢といったパラメータにより「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」でカテゴリー分けしており、TCR Japanではそのうち「シルバー」と「ブロンズ」のドライバーのみ参加を認めている。
ちなみに「プラチナ」はF1ドライバーを中心にカテゴライズされており、そこを基準に見ると他のカテゴリーのレベルも推察頂けるだろう。

レースイベントは土日2日間。
土曜日がサタデーシリーズ、日曜日はサンデーシリーズという呼び名でそれぞれ独立しており、予選、決勝も両日それぞれで行われる。

当日はフリー走行もなく、いきなり20分の予選からスタート。
そこで最速タイムを刻んだ方がポールポジションとなり、決められたスターティンググリッドに従い数時間後に始まる決勝レースに臨む。
レースはスプリント形式。
グリッド上に並べられたマシン達が、F1と同じレッドシグナルの全消灯でスタートしていき、団子状態のまま一コーナーに突入していくのだが、その光景は過去のJTCCレースを思い起こさせるほどでなかなかの迫力だ。

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どこでも接戦が繰り広げられるTCR Japanのレース展開。
BOP(バランス・オブ・パワー)が実に上手く機能しているようだ。
これについては前記事をご覧頂きたいが、ざっくり言えば、各エントリー車両に対し同じような性能、ラップタイムとなるよう性能調整を施す事を言う。
これはどの車でも勝てるチャンスを与えようという試みなのだが、面白いのが性能調整の方向性が各車違うこと。
例えば、ある車はコーナーリング速度は速いもののエンジン馬力に劣っていたり、その逆にエンジン馬力やトルクはあるもののコーナリング速度が劣っていたりとかある。
コース上で互角の勝負に見えても、そこに至るまでの速さの源は各車微妙に違っていたりするわけだ。

ここまで拮抗してくると、ドライビングやマシン作り、セッティングの些細なミスも命取りとなる。
今後勝率をあげていくためには、ドライバーとチーム双方がより高いレベルへ能力を上げていく必要があるだろう。

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さて、実際のTCRマシンの走り、挙動を観察するため予選での模様をチェックしてみた。
場所は30Rの低速アドバンコーナー。
進入が下りで上りながら立ち上がっていくヘアピンカーブだが、進入で丁寧に走らないとオーバースピードで外に膨らむし、立ち上がりは十分速度を乗せていかないと次コーナーへのアプローチで速度が乗らなくなる。
そのため、多くのカテゴリー、マシンでは進入で早めに向きを変えてアクセルを踏む時間を長く取るアプローチを取っているが、これはTCRマシンでも同じなようだ。
多少のバラツキはあるものの、多くのTCRマシンはコーナー進入手前で思いっきり向きを変えて立ち上がっているように見えた。

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同じコーナーで別アングルから。
左リアタイヤが浮くほどの攻めの姿勢は、積極性がわかりやすくて迫力だ。
ただその浮いた高さと浮いている時間が各車微妙に違っていて興味深い。
シビックTCRは全車浅くスムーズな感じだったが、他車は豪快で荒っぽい感じに見えた。
マシン本来の素性、特性の違いなのかもしれない。

そういえばWTCC時代でもあったマシン開発では、このようにマシンが浮いた状態での剛性バランス、駆動力、空力も計算にいれて行われているらしい。
もし浮いた状態で毎周同じラインで速度も安定しているマシンがいたなら、しっかり作りこまれた完成度の高いマシンなのかも?と注目してみるのも面白いと思う。

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さて、今回取材で伺ったTCR Japan 2019 Rd.3 サタデーシリーズ決勝は、前述のTEAM GOH Models金丸ユウ選手が優勝を飾った。
当日は、トラブルによるエンジン交換ペナルティで最後尾グリッドからのスタートを余儀なくされたが、そこからの怒涛の追い上げで勝利を勝ち取った。
何度も書いてきたが、本来ならBOPによって拮抗したレース展開になるはず。
誰もが最後尾からの勝利は厳しいと思っていたが、雨という状況下で巧みなドライビングを発揮したドライバーの技量、きっちりマシンを仕上げてきたチームのエンジニアリング技術の高さがこの勝利を引き寄せたように思える。
これが、従来の優勝者イジメと言われていた重量ハンディなどと違うBOPの妙なのだろう。

ただ良いパーツ、パワーの出るチューニングをお金をかけて開発、投入して勝つのではなく、差の出にくい与えられたマシンからいかに速さを引き出すか?
こういった点に注目しながら今後のレースを見ていくと、TCR Japanを始め各国のTCRシリーズをより面白く見る事が出来ると思う。

【取材 –文 – 写真】
編者(REVOLT-IS)

【取材協力 – 問い合わせ先】
富士スピードウェイ
TCR Japan事務局

編者
REVOLT-IS立ち上げの発起人。サーキット走行会や草レースなど経験が豊富で、スポーツ系チューニングやセッティングに強い関心がある。 サーキットやストリート、ドリフトなどの走りのイベントへ積極的に顔を出しながら、カメラを構えつつ様々な考察をする毎日。
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