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物作り学生達の夏 – 学生フォーミュラ 2019

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また今年も、自らの物作り技術を競う学生達の夏、学生フォーミュラの季節がやってきた。

学生フォーミュラ日本大会2019 -ものづくり・デザインコンペティション-

学生達の手により制作したフォーミュラカーが、車検、デザイン、開発コスト、プレゼン、燃費、走りの性能、タイムといった様々な要素の総合得点で勝敗を競いあう本大会。
今年も静岡県小笠山総合運動公園、通称”エコパ”で、2019年8月27日(火)~8月31日(土)の期間で開催された。

結果はご存知のように、総合優勝は名古屋工業大学が初の栄冠を獲得。
EVクラスでは名古屋大学が2連覇を達成したわけだが、他の学校も負けず劣らずな独創的でカッコいいマシンを持ち込み、1年の成果を出し切ろうと懸命に取り組んだ姿など本当に見どころの多い大会だったと言える。
2018年大会終了後から、休む間もなくこの日のために準備を進めてきた学生達。
2019年夏の挑戦はどうだったか?
残念ながら今年も最終日だけの取材となってしまったが、それでもそこで感じたこと、驚いたこと、関心を持ったことがいくつかあった。
そんな模様をREVOLT-IS目線で、今回もお伝えしていきたいと思う。

尚、個別取材した学校については次回にまとめてお伝えする予定なので、今しばらくお待ち頂きたい。

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今年は例年より開催時期が早まったこともあってか、昨年のような台風や酷いゲリラ豪雨に悩まされることがなく、最終日も一時雨が降ることもあったが概ね快晴。
まるで真夏のような蒸し暑さが学生達に襲いかかっていたが、悔いを残さないようにとばかりに、どこも真剣な表情で着々と準備を進めていた。

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日本全国だけでなく、中国、タイ、インドネシア、台湾、韓国、バングラデシュといったアジア圏の参加も多い本大会は、全日本大会と言うよりはアジア選手権といった様相。
近年、政治の世界ではちょっとした緊張状態も報じられるアジアの国々だが、学生フォーミュラの世界ではそんな気配は微塵もない。
言葉の壁もなんのその、まるで仲間、友人達と再会したかのように談笑したり盛んに情報交換を行う光景があちこちで見られた。

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”クオリティの高いマシンが多い”
”空力を考えたウイング装着車、フルカウルとしたマシンが目立ってきた”。

今回各マシンを見て最初に思った感想だ。

素人ならどこかの企業が作ったマシンだと信じてしまいそうなくらいで、ギャラリーからもカッコいいという声があがるほど。
ウイングやノーズデザインにも独特で、積極的に空気を味方につけようと試行錯誤してきたようだ。
一般の認識では高速サーキットレベルでないとウイングは効かないと思われがちだが、F1でもモナコGPのような超低速コースほど車体を路面に押し付けるダウンフォースが重要なほどで、学生フォーミュラのようなジムカーナコースでもウイングなどから得られる空力効果は無視できない。
そういえば全日本ジムカーナ選手権では、フォーミュラカースタイルの専用マシンも上位を争っている。
こちらも派手なウイングを装着しているので、空力に懐疑的な方はぜひ見ていただきたい。

次に車体全体に目を向けてみる。

各マシンの多くに共通するのが、さらなる軽量化やドライバーの乗りやすさ、運転しやすさをテーマに仕上げてきた感がある。
主にフレームやカウル、モノコックの製法見直しに、カーボンホイールやマグネシウムホイールの導入、カーボン製サスペンションアームの導入、13インチから10インチタイヤへ変更、あえてカーボンからアルミモノコックへ変更したり新たなサスペンションジオメトリーの導入など。さらに電子制御CVT、パドルシフト、エアシフター、自動可変ウイング、インホイールモーター、電子制御スロットルといった新機軸の採用、熟成を重ねてきている大学もちらほら見受けられた。

そして、近年はエンジンを2気筒、単気筒としたマシンが上位争いに多く絡んできており今後はそういったマシンが増えてくるかと思いきや、あえて4気筒エンジンに拘りそれに合わせたマシン作りで優勝争いに食い込む学校もいたりする。

さらに先のような空力重視のマシンだけでなくFJ1600カテゴリのようなウイングレスマシンも健在で、こちらはサスペンションセッティングによるメカニカルグリップを重視する方向だ。
見た感じではウイングやカウル付きマシンよりコンパクトで軽い印象で、軽快感もこちらが勝っているように思えてくる。

こうした様々な要素を自分達の求める理想、目標に向けて選択し組み上げ、バランスさせていくのが車でありモータースポーツ。
単純にパワー、軽さ、空力、単体の部品だけで性能を測れないのが難しく、そこがまた面白いと言える。

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走行セッションを見てみる。
こちらは上位グループによるエンデュランス競技だ。

特設コースを二人のドライバーが交代で連続周回し、合計22kmを走破してタイムを競う。
コース幅は意外と狭く、それでいてパイロンタッチやコースアウトは減点対象となる。
また走行後の燃料または電力の消費量が測られ、それに応じた得点も加算される。
ただ速く走るだけでなく、ドライバーの集中力とドライビングの正確さ、効率の良いエネルギーの使い方が求められるためかなり難しそうだ。

走りを見てみると、去年と比べかなりハイスピードな印象。
ブレーキも何度かロックさせたり姿勢を崩しながらも、幅の狭いコースにも臆することなく攻めていた。
まぁこれは、去年がヘビーウェットでの走りしか見ていなかったせいもあるだろうが、それでも予選でポールポジションを取りにいくかのような激しさを見せてくれた。
驚いたのが、EVが想像以上に速くなっていたこと。
ちょうどEV車両とガソリンエンジン車両が同じグループで走っていたのだが、グループによってはガソリンエンジン車両より速いタイムを刻みながら迫る光景も見られた。

反面、熱害によるパワーダウンやブレーキトラブル、去年のチャンピオンチームに至ってはカーボン製サスペンションアーム破損に見舞われており、マシン作りの難しさも垣間見えた。
ただ、なんでも一発成功するより、失敗ほど大きな知識と経験が得られるものはない。
今回トラブルで止まってしまったマシン達は、来年より強くなって帰ってくるだろう。

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ここからは企業ブースをいくつか紹介していく。
今年も国内の自動車メーカーを始め、日本有数の多くの自動車系企業が学生フォーミュラに協賛、支援をしている。
ここ数年人材不足が社会問題となっているだけに、物作りの未来を担う若者に期待する企業がそれだけ多いと言えるだろう。

まずこちらのマツダE&Tブース。
一般には介護車両やモーターショー向け特装車を作っている印象を持たれているが、実際はマツダの新型車開発に深くコミットしており、デザインから設計、開発、テスト、解析、品質管理に至るまで関わっているという。
ブース内ではそのような説明と近年の活動内容がパネル展示されていた。

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チューニングカー好きにはご存知のHKSブース。
実はビジネス向けの開発、サービス展開も積極的に行っており、近年では一般や自動車メーカーでの採用を狙ったドラレコや電動スーパーチャージャーにも力を入れている。
そんなHKSの学生フォーミュラに対しての取り組みだが、今回はいくつかの学校にF-CONコンを提供しており、燃調や点火時期セッティングでさらに効率が良くなったと高い評価を受けていた。

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こちらもチューニングカーファンにお馴染みのRS-Rブース。
自社開発の学生フォーミュラ専用ダンパーを多くの学校に供給しているという。
名ブランドであるビルシュタイン、オーリンズからRS-Rに乗り換えたという学校もあったそうでそのメリットを聞いてみたところ、各学校からの細かな異なるオーダーに応えてくれるのはもちろんの事、国内メーカーなだけにリクエストに対するレスポンスが非常に早いことをあげられていた。

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国内レーシングカーコンストラクターの童夢ブース。
こちらでは自社開発の車体 MF-5と、過日紹介した天然素材(麻)を使ったエアロパーツを展示していた。
学生フォーミュラの車両レギュレーションに近いMF-5だけに、多くの学生達が見学に訪れていた。
天然素材を使ったエアロパーツも、FIA-GT4カテゴリのレーシングカーでは導入が進められているという。
いずれ学生フォーミュラで採用してくる学校が出てくるかもしれない。

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あの日産GT-R(R35)の専用シートを開発した事でも名高いタチエスのブース。
開発中様々な厳しい要求があったようだが、その全てをクリアして製品化したのが写真のシートとなる。
各部がほぼ無段階に自動調整可能で、あらゆる体格の方にフィットするようになっている。
実際座らせてもらい調整を試みたのだが、ほぼ完ぺきに自分の好みに合わせる事ができた。
その座り心地の良さはとても気持ちよく、マイカーのシートに欲しくなるほど。

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可愛いミニチュアホイールが出迎えてくれたのは東亜のブース。
金属と樹脂加工、成形に豊富な実績を持っており、その品質は折り紙付き。
今回は事例として、特別にカラフルなスポークホイールや招き猫、樹脂のミニチュアピストンなどを作って展示していた。
残念ながら市販の予定はないそうだが、車好きならぜひ欲しくなる一品ばかり。
ぜひ市販化を検討してもらえたらと思うのだが。。。

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さてピットへ戻ってみると、全競技日程を終えたチームが記念撮影を行っていた。
目標達成した学校、悔し涙を流した学校と競技を終えた直後は悲喜こもごもだったが、この時は全てやりきった感の学生達の表情が見られた。
きっと来年卒業で後輩に後を託した先輩、先輩の無念を晴らそうと意気込む後輩、来年こそ上位を狙っていこうと意欲爆上げな学生達とかいただろう。
来年、2020年はどのような表情が見られるだろうか?


ここまで読んでお気づきかと思うが、学生フォーミュラはかなり自由度の高いマシン作りが出来るのも特徴の一つ。
もちろん一定の車両レギュレーションは存在するしコスト審査もあるのでお金を湯水のように使うわけにはいかないが、それでもかなり緩めで、自分達のやりたい技術、無数の組み合わせを試す事ができる。
当然マニュアルなど存在はしない。
授業で学んだ事やサポート企業から教えを受けた事を自分達で理解、分析しながら試行錯誤を重ねていくしかない。
ある意味ゼロからイチを起こしていくようなもので、これは想像以上に困難だ。
だがそういった試行錯誤が自分の血肉となり、深い知識と経験を積み重ねていくことになる。
結果、社会に出てから学ぶべき事を新社会人デビューで既に持っている事になるわけで、採用する企業としても魅力的に映ってくる。

今の日本は人材不足が深刻。
どこも即戦力となる若い人材を欲しているが、学生フォーミュラ経験者はまさに打ってつけと言えるだろう。
ちなみに出展企業ブースの中には人事部の方もおり、懸命に取り組む学生達に熱い眼差しを向けていたことを付け加えていく。

【取材 –文 – 写真】
編者(REVOLT-IS)

【取材協力 – 問い合わせ先】
学生フォーミュラ事務局

編者
REVOLT-IS立ち上げの発起人。サーキット走行会や草レースなど経験が豊富で、スポーツ系チューニングやセッティングに強い関心がある。 サーキットやストリート、ドリフトなどの走りのイベントへ積極的に顔を出しながら、カメラを構えつつ様々な考察をする毎日。
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