NGK(日本特殊陶業株式会社)では、プレチャンバ―プラグなる製品を開発中。
これは、エンジンシリンダー内だけでなくプラグ本体でも燃焼を起こさせる事で、リーンバーンエンジンで起きやすい未燃焼ガスの発生を抑えようというもの。
今以上の低燃費化と排ガス低減が求められるガソリンエンジン開発において、この点火プラグは大きな助けになる可能性を秘めている。

外観は普通の点火プラグと変わりないように見える
一般的なガソリンエンジンは、シリンダー内部に送りこまれた空気とガソリンの混合気に対して点火プラグが着火し燃焼。
その力を動力エネルギーに活用して車を走らせている。
現在は、ガソリンの割合を少なく空気の量を増やすというリーンバーン(希薄燃焼)が主流。
直噴エンジンもこの類となる。
リーンバーンは燃費向上と排ガスに含まれる有害物質の低減に効果があるが、反面、混合気が着火しにくく(いわゆる失火状態)、燃焼しきれず有害物質を含んだ生ガスを外へ排出してしまう事になる。
各社、確実な着火と燃焼効率向上を目指して試行錯誤しているが、NGKではその解として、今回のプレチャンバ―プラグを導き出した。
一見、どこにでもある普通の点火プラグに見えるが、その秘密は発火部を覆う金属製の蓋。
半円状のその蓋をよく見ると、細かい穴がいくつか不規則に設けられている。
この蓋内部、実は副燃焼室の役割を果たすようで、この中で一時的に燃焼させたガスを各穴からシリンダーへ送りこみ、混合気が充満するシリンダー体積全体を同時着火、いわゆる体積着火をさせる仕組みとなっている。
これにより、少ないガソリン割合でも即時着火できるようになり燃焼速度が向上。
燃費の向上や生ガスの低減に繋がるという。
ちなみに蓋の穴は共通ではなく、車やエンジンの仕様によって径や位置、数が変わる事を想定。
車に合わせて、理想の燃焼速度と全運転領域での最適化が追求できるよう配慮されている。
外観からもわかるように、従来のプラグホールでそのまま使用可能。
採用にあたり、エンジンの設計変更や補器類を増設する必要もない。
2段階燃焼とそれを機械的に行わせようとする観点から、エンジンフィーリングとレスポンスに段付きが発生しないかや、それに伴う振動の増加やプラグの耐久性低下といった懸念を感じたが、開発陣も承知のようで、現在も様々な角度から開発を進めているという。
実現すれば多くのエンジンで理想的なリーンバーンを、それもコストを欠けずに導入できるようになるかもしれない。
ただチューニングパーツとしては、プラグ自体が車種専用設計となるため難しいようだ。
【取材・文】
編者(REVOLT-IS)
【取材協力】
NGK(日本特殊陶業株式会社)