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GRヤリスと開発経緯と今後 – 東京オートサロン2020

モータースポーツで培ったノウハウ、人材を市販車開発に生かし、そして世界に通用する市販スポーツカーを作ろうという旗の元これまで活動を続けてきたTOYOTA GAZOO RACING
SUPER GTWEC(世界耐久選手権)ダカールラリー(旧パリダカ)スーパーフォーミュラ、そしてWRC(世界ラリー選手権)とモータースポーツでは現在までに目覚ましい活躍で世界を沸かせてきたが、市販スポーツカー開発という目標では、トヨタ86、そしてGRスープラの登場でようやく日の目を見る事となった。

そしてそれに続くGRヤリス(ヤリス GR FOUR)が、ここ東京オートサロン2020で世界初公開。
多くの方々が熱い視線を注ぐその車の成り立ちを、TOYOTA GAZOO RACINGプレジデント友山茂樹氏が高らかに語ってくれた。

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友山氏の手でアンベールされたGRヤリス
車両ベースは海外専用の3ドアモデルだ。
昨年、富士スピードウェイで見たプロトタイプカーは大柄な印象を受けたが、今回お目にかかった市販バージョンは全体的にコンパクトに絞り込まれた様に見える。
まるでホットハッチと親しまれてきた往年の3ドアハッチバックカーが復活したようで、編者個人も嬉しさのあまりしばらく感傷的に友山氏のスピーチに聞き入っていた。

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これまでのトヨタ車では考えられないスーパーホットハッチが誕生したという友山氏。
272馬力/37.7kgf・mを誇る1.6リッター直接3気筒ターボエンジン。
パワーウエイトレシオは4.706kg/psで車両重量は公表されていないが、計算してみると約1,280kgといったところ。
近年の市販車の中では超軽量級と言えるだろう。

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エンジン単体の軽さにアルミ製のフロントボンネットとドアパネル(サイドとリア)、カーボン素材を採用したルーフも軽さに寄与しているようだ。
ちなみに同クラスの4WDモデルと比較すると、セリカGT-FOUR(ST-205)で1390kg、最新型スバルWRXのSTIモデルで1490kg。
その差は一目瞭然だ。

そのパワーを伝える専用開発の電子制御フルタイム4WDシステムに、これまた専用開発サスペンションの形式は、フロントがマクファーソンストラットでリアはダブルウィッシュボーン。
全幅はトヨタ86よりも30mmワイドに。
再び同クラスの他車を比較してみると、セリカGT-FOUR(ST-205)より30mm、最新型スバルWRXのSTIモデルより10mm拡幅されている。
それらから恩恵を受けるだろう直進安定性とコーナリング性能に注目だ。

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他にも空力を考え、車内スペースを犠牲にするのを承知でルーフを低くしたボディデザイン。
大容量ブレーキに6速マニュアルミッション。
空冷インタークーラーと冷却スプレー機能(スプレーは一部グレードのみ)。
8J-18インチホイール(グレードによる鋳造と鍛造がある)。

と、細部を見ても拘りぬいたこの車。
まずモータースポーツで勝つため、走りをより楽しんでもらえるよう割り切った開発がなされている。

モータースポーツから市販車を生み出す。
確か日産スカイラインGT-R(BNR32)でも似たような経緯で開発されたが、その後の人気と活躍は皆さんのご存知の通り。
GRヤリスの今後に否応なく期待が高まってしまう。

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開発工程も他の車と同じ生産ラインを使うのではなく、愛知県豊田市の元町工場内にスポーツカー専用の生産ラインを新設。
”GRファクトリー”と呼ばれるそれは、従来のコンベア式の組み立てラインではなく、組み立てを行う作業スペース(セル)間をAGV(無人搬送車)で連携していくのが特徴。
これは作業のさらなる効率化と、作業場所や作業内容に捕われない臨機応変な組み立てラインの変更対応が出来ることで注目されている方式だ。
トヨタとしては、高剛性なボディ製造と高精度の組付け作業が可能であること。
突然の変種開発、生産量の変更にも生産性を落とすことなく対応できること。
さらに新車開発のたびに開発ラインを新規に起こすとコストがかかり、特に少量生産のスポーツカーでは従来のやり方だと価格がさらに跳ね上がってしまう事を憂慮し、AGVを使った生産ラインならば様々な車種開発に対応できるとあって採用を決めたようだ。
もし今までの生産ライン継続ならば、GRヤリスは車両価格がもっと跳ね上がり、思ったように売れず大赤字になっていたかもしれない。
いやそれよりなにより、GRヤリスをオールトヨタで開発!という企画自体もお蔵入りか、またどこかのメーカーに開発委託する事になっていただろう。
さらに全国から熟練工が集められており、さらに新人教育にも力をいれていくようでその準備に抜かりはないようだ。

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トヨタのスポーツカーを取り戻したい!!
その思いでモリゾーこと豊田章男社長は、エコや燃費を大事しようという風潮、社長以外の一部の経営陣、営業サイドからの猛反発などといった厳しい条件下の中、スバルやBMWとの共同開発という形でトヨタ86、GRスープラを誕生させてきた。
この共同開発という形式には、一般からは様々な意見、批判も飛び交っていたが、そんな中でよくぞスポーツカーを復活させてくれたと、本当に嬉しくもあり感謝さえしたくなったのを覚えている。

もちろん豊田章男社長はそんな事は承知の上だったのだろう。
モータースポーツ活動を通し、地道に今の時代に生きるスポーツカーを一般に浸透させていき、周囲の理解者を増やして行きながら、必ずオールトヨタのスポーツカーを復活させよう!!と奮闘されてこられた。
その思いの具現化がこのGRヤリスというわけだ。

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開発の発端も、トヨタのマスターテストドライバーも務める豊田章男社長の一言から来ている。
2016年秋、ヤリスWRCのテストカーをドライブした際に大きく感銘を受け、次期WRCマシンのベースとなりえる、世界ラリーに通用する市販4WDスポーツカーの開発を行うよう指示を飛ばした。

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古参のWRCファンならご存知と思うが、トヨタは1988年から1999年までにセリカGT-FOUR(ST165~ST205)とカローラWRCで参戦してきた経験を持ち、その間ドライバータイトルを4回、メーカータイトルを3回獲得した実績を誇っている。

であればスポーツ4WD車両の開発もなんて事ないのでは?
と、思いがちになるが、本格スポーツ4WDの開発はセリカGT-FOUR(ST205)以来で実に20年ぶり。
今日では当時のノウハウや人材もすっかり途絶えてしまったという。
まさにゼロからのスタートで、GRヤリスの開発がスタートした。

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その過程は手探りの連続。
当初、曲がらないと思ったら急にスピンしたり、テスト走行から帰ってきたらオイルの逆流で煙を噴き上げるなどのトラブルがあり、前途多難を予感させた。
それでも友山氏を始め、テストドライバー、開発に関わるTOYOTA GAZOO RACINGスタッフが一丸となり、どのようにすれば意のままに操れる楽しいスポーツ4WD車を生み出す事ができるか?、日々試行錯誤を繰り返しながら今日まで開発を続けてきた。

近年のトヨタ車は豊田章男社長が実際にステアリングを握り、そのうえで合格点を出さないと販売が出来ないという。
それはこのGRヤリスも然り。
ただ何度かテストしてもらっているものの、東京オートサロンの会期時点ではまだ合格点が与えられていないという。
妥協は許さないという、豊田章男社長の強い拘りなのだろう。
そういえば、2月に発売予定の新型ヤリスが昨年の東京モーターショーで発表されたが、その時も燃費数値に不満があるという理由でOKが出ておらず、今もギリギリまで開発を続けていると語られていた。

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GRヤリスの発売時期は2020年夏ごろを予定。
今回も発売ギリギリまで、さらに開発を進めてより良い車を送り出せるよう奮闘を続けるそうだ。

既に2020年1月10日から専用サイトで予約が始まっており、バックオーダーは1000台以上(2020年1月12日朝の時点)を軽く超えており、その期待値はかなり高い。
まずは第一期モデルには、First EditionとしてRZ、RZ “High Performance”という二つのグレードを用意。
車両価格はそれぞれ税抜き3,960,000円と4,560,000円で設定されており、車両の性能、装備を考えたら非常にお買い得と言える。
ちなみに両グレードの違いは、内装や一部アクセサリーパーツの有無や廉価版かどうかに差があるくらいで、車体性能そのものに違いはない。
カスタムやチューニングベースとしてなら安いグレードを選べばいいだろう。

GRヤリスの登場が、2020年以降の自動車業界、モータースポーツにどのような旋風を巻き起こすか?
今からワクワクドキドキしながら登場を待ちたいと思う。

【取材 – 文 – 写真】
編者(REVOLT-IS)

【取材協力 – 問い合わせ】
TOYOTA GAZOO RACING
TOYOTA
東京オートサロン事務局

編者

REVOLT-IS立ち上げの発起人。サーキット走行会や草レースなど経験が豊富で、スポーツ系チューニングやセッティングに強い関心がある。 サーキットやストリート、ドリフトなどの走りのイベントへ積極的に顔を出しながら、カメラを構えつつ様々な考察をする毎日。

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