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黎明期のFIA Drifting Cup 2019

20191214_FIAドリフティングカップ

国際自動車連盟、通称FIAの冠を持つドリフト世界一決定戦「FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP」も今年で早くも三回目を迎えた。
世界各国から腕自慢のドリフトドライバーが集結する事でも知られる本大会だが、今回はあのフォーミュラドリフトジャパンからもトップランカー選手がエントリー。
そして舞台は、昨年までの東京お台場から茨城県は筑波サーキットへ移動。
タイヤ本数制限も無くより過激な走りが期待される中、新たな舞台を各国の強豪ドライバーがどう攻略していくか?など、今回は非常に見どころの多いドリフト世界大会となった。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
参加選手達の記念撮影
日本を始め、ロシア、イギリス、ニュージーランド、スイス、タイ、中国、マレーシア、台湾、クウェート、香港、イタリア、韓国、モザンピーク、フィリピン、シンガポール、南アフリカと17カ国からのエントリーを集めた
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
国際大会ともなると、こちらのBMW M3のように普段なかなか見ることのないマシンも見ることができる。
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
エキシビジョンとして、日本の誇る最速アタックマシンによるタイムアタックイベントも行われた
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
グリッドに並べられた世界ナンバー1ドリフトを決めるマシン達
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
ピット上の観客スペースもいっぱいだ
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
一般観客も入れるグリッドウォークでは、憧れの選手やマシンとの記念撮影やサイン会なども行われた
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
出走前、選手達も和やかに談笑中
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
下妻市立千代川中学校吹奏楽部の生徒達による演奏
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
単走チャンピオンのチャールズ選手。
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
MCとリポーターを務めた方々
向かって右から、D1GP実況でもお馴染みの鈴木学、レーシングドライバー織戸学、アメリカ育ちでモデルの水村リア
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
主催、来賓、ゲストの方々
向かって右から鈴木亜久里(ARTA)
田中有光(FISCOクラブ会長)
藤井一裕(JAF会長)
菊池博(下妻市長)
土屋圭市(大会名誉顧問)
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
名誉顧問の土屋圭市からの開会宣言で追走トーナメントが始まった

さて、大会結果は既報の通りソロラン(単走)を日産シルビア(S14)を駆る香港のチャールズ カキ エン(Charles Ka Ki Ng)選手が、バトルラン(追走)を昨年に続き日産シルビア(S15)を駆るロシアのゲオルギィ”ゴーチャ”チフチャン(Georgy Chivchyan)選手がそれぞれ制した。
色々な意味で混迷のセッションとなった本大会だったが、そんな中でも両者、特にゴーチャ選手は単走でも3位と好位置につけた。
見ていてマシンとドライビングがとても安定しており、それが大会2連覇に繋がったように思える。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
2連覇を達成したロシアのゲオルギィ “ゴーチャ” チフチャン選手と日産シルビア
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
単走1位、決勝5位のチャールズ・カキ・エン選手(日産シルビア)

選手側、運営側の混乱、マシントラブルによる敗退も多く発生する事態となった本大会。
単走チャンピオンのチャールズ選手でさえ、追走初戦でステアリング系トラブルが発生、修理が間に合わずリタイヤとなったが、ゴーチャ選手はクラッチに不安を抱えていたものの大きな問題にならず、力強い走りで決勝までコマを進めた。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
互角の戦いを展開すた1位のゲオルギィ チフチャン選手(日産シルビア)vs 4位の松井 有紀夫選手(マツダRX-7)
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
ゲオルギィ “ゴーチャ” チフチャン選手を応援する熱狂的なロシア応援団

ロシア応援団の声援を受けてて迎えた決勝戦。
出走直前になんとスロットル系のトラブルが発生。
会場は一時騒然となったが、そこはメカニックに尽力で無事修理が完了して出走へ。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
2連覇を達成したロシアのゲオルギィ “ゴーチャ” チフチャン選手と日産シルビア

そこで幸運の女神をグイっと引き寄せたのか、優勝を決めた直後に持たせていたクラッチが音をあげるという幸運がついてきた。
どのカテゴリーでも幸運をも引き寄せるのがチャンピオンと言われているが、ゴーチャ選手はそれに相応しい勝ち方をしたと言えるだろう。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
3位のアンドリュー グレイ選手(トヨタマーク2)vs 4位の松井 有紀夫選手(マツダRX-7)
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
10位のマイケル”マッドマイク”ウィデット選手(マツダRX-7)vs 2位の藤野 秀之選手(日産180SX)

注目のフォーミュラドリフトジャパン勢を見ていこう。
その走りはやはり凄かった。
2019フォーミュラドリフトジャパンチャンピオンのアンドリュー・グレイ選手は器用な技の冴えを随所で見せてくれ、派手なパフォーマンスと愛嬌でファンの多いマイケル”マッドマイク”ウィデット選手は、4ロータリーエンジンの快音を響かせながら強烈なスピードと角度で激しい走りを見せてくれた。
やはり長年様々なドリフト大会で戦ってきているだけに、その経験値は他の選手以上と言えた。

そんな両選手の命運は大きく分かれた。
アンドリュー・グレイ選手はガスケット抜けの症状に悩まされながらも勝ち上がりファンを沸かせたものの、藤野 秀之選手に敗れて惜しくも3位。
マッドマイク選手はいくつかコースアウト減点はあったものの攻めの走りを見せてくれたが、後追い時にマシントラブルによる珍しいスピンもあってまさかの初戦敗退と残念な結果に。
実力は折り紙付きで優勝争いに絡んでもおかしくないのだが、今回ばかりはツキがなかった。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
11位の川畑真人選手(トヨタスープラ)

次に我らが日本代表選手を見ていこう。
「FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP」初代チャンピオンの川畑 真人選手。
今季は話題の新型トヨタ・スープラにマシンチェンジしてD1GPに参戦。
そして、先ごろ東京モーターショーでの発表で話題となった3UZエンジンへの換装。
エンジンを何度も降ろして微調整を進め、この筑波サーキットへ勇躍乗り込んできた。
だが会場では、そのエンジンの不調で馬力が半分まで出ていないなどの噂があり。
事実そのせいか単走では、去年まで乗っていた日産・GT-Rほどの迫力が見られなかった。
上手くまとめて単走7位通過で追走トーナメントへの進出を果たしたものの、追走相手に下された数度の赤旗、運営サイドのシグナル変更ミスに振り回されてコンディションを乱されたか、仕切り直しの再走でまさかのコースアウト。
不本意な結果で初戦敗退となった。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
16位の小橋 正典選手(日産シルビア)vs 17位のデイチャポン トオインチャロン選手(トヨタ86)

2019年D1GPランキング5位の”燃える男”小橋 正典選手。
単走では好走を見せたものの、コースアウトでボンネット上から火が出るアクシデント。
一時そのままリタイヤかと思われたが、燃料ラインの一部が燃えただけですぐに火が消し止められたおかげでエンジンは無傷。
何事もなかったかのように敗者復活戦へ挑む事ができた。
そんな幸運も味方つけて敗者復活戦は見事勝利。
翌日の追走トーナメントへ進むこととなった。
だがその運もここまで。
迎えた追走初戦では、一本目の走行後にクラッチトラブルが発生。
修復を試みたものの制限時間内に間に合わず無念のリタイヤとなった。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
9位の横井 昌志選手(日産シルビア)vs 8位のチャナッポン ケードピアム選手(日産180SX)

2018、2019年の2年連続D1GPチャンピオンの横井 昌志選手。
今ノリにのっているD1選手だが、単走は順当に5位で追加。
追走トーナメントでは優勝候補に上げられるほどだったが、追走初戦でまさかの敗退。
全体的に横井選手が優勢に思えたが、審判団は1本目にあったわずかなミスを見逃さなかった。
まさかのD1チャンピオンの敗退に、会場も重い空気に包まれた。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
2位の藤野 秀之選手(日産180SX) vs 3位のアンドリュー グレイ選手(トヨタマーク2)

2017年D1GPチャンピオンの藤野 秀之選手。
単走は8位で順当に追走トーナメントに進む事が出来たが、その初戦の走行前にテンションロッド破損が発生。
出走直前まで修復作業が入るという波乱の展開を迎えた。
以降はD1チャンピオンに相応しい力強い走りで決勝戦までコマを進めたが、追走二本目がスタートした直後に今度は突如デフギア破損で万事休す。
世界ランク2位が確定する事となったが、ゴーチャ選手、藤野選手ともどもお互い走り合って勝負を決めたかったと語っており、不満が残る大会となったようだ。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
互角の戦いを展開した4位の松井 有紀夫選手(マツダRX-7) vs 1位のゲオルギィ チフチャン選手(日産シルビア)

2019年D1GPランキング2位の松井 有紀夫選手。
マシンがとても調子がいいと語るほど練習走行からとてもリズム良く走れており、単走はなんと2位通過。
追走トーナメントでは日本の有力選手が次々と初戦で敗れていくなか、先の藤野選手ともども順調に勝ち上がってきた。
その快進撃は続きなんとベスト4進出。
そこでの相手、世界チャンピオンのゴーチャ選手とサドンデスに突入するほどの名勝負を繰り広げたが、わずかな差で敗退。
そこでリズムを崩してしまったのか、その後の3位決定戦ではその相手、名手アンドリュー・グレイ選手へ合わせきれず再び敗退となった。
だがそれでも世界ランク4位が確定した事で、本人にとっては過去最高の成績を上げた事になる。
世界に轟かしたこの走りは、来季への大きなプラスとなる事だろう。

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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
単走の上位3選手
中央が1位のチャールズ・カキ・エン選手
向かって左が2位の松井 有紀夫選手
向かって右が3位のゲオルギィ チフチャン選手
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP
追走トーナメント上位3選手
中央が1位のゲオルギィ チフチャン選手
向かって左が2位の藤野 秀之選手
向かって右が3位のアンドリュー グレイ選手
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FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP

国際格式としてのドリフト競技とはどのようなものか?
古くから行われているサーキットレースやラリーなどとは違い、ドリフトは競技としての歴史は浅くその多くが前例のない事ばかり。
そのためか「FIA INTERCONTINENTAL DRIFTING CUP」では毎年、イベント形式、競技進行、コースレイアウト、審査方法といった様々な点の見直しを図りながら模索を続けている。
そうして迎えた第3回大会では、批判の多い機械審査ではなくヒューマンジャッジを重視した形式にしたり、イベント進行も他のドリフト大会で好評だったスタイルを取り入れてきた。

果たしてその成果は?

残念ながら、今回に限って言えば悪い方向に向かってしまったように思える。
目立ったところでは…

・審査基準のわかりにくさ
・審査時間や走行インターバルの異常な長さ
・MCと国際審判団、運営スタッフとの情報共有や理解不足
・ルールや大会進行を誤解していたように見受けられる選手が何名かいた
・競技進行の大幅遅延で、いくつかの対戦が翌日にまわされる事態に

これは実際に観戦に行かれていた方、Youtube Liveを見られていた方で同じ思いを抱いた方も多かった事だろう。

詳しく話は聞けなかったが、いくつか情報を集めてみたところ、そこには言葉の翻訳、解釈による認識の違いが影響していたように思える。

海外の言葉を学んだ方ならおわかりだろうが、日本語は曖昧で、一つの単語や言い回しだけでも様々な意味に取られがちだ。
それを英語やロシア語、広東語などに翻訳しようものなら、翻訳元の言葉がどういう意味を持って使われたかを理解する必要がある。たとえ直訳が正しくとも、間違った理解では別の意味で翻訳がなされてしまう。

今回の大会で言えば、海外から集結する選手やチームスタッフ、審判団や関係者に対し、大きく変化した審査基準や大会進行についての理解がどこまで正しく浸透できていたかがポイントとなってくる。
特にヒューマンジャッジを重視するなら、この点を疎かにすると揉め事に発展してしまう。
実際、ある有力チームからは審査に関する不満が漏れ伝わってきた。

日本発祥のドリフトとは言え、今やドリフトのカッコ良さや美しさに対する基準は各国で独自に育ってきているのが現状だ。
”世界一はこうあるべき”、”世界一を決めるべき審査はこれです”と言い切れる明確な基準策定とその推進が強く求められる。

そしてマシントラブルが多かったのも本大会を印象付けていた。
追走トーナメントに進出した選手の、実に三分の一に何らかのマシントラブルが発生。
序盤は競り合う事なく敗退するケースばかりが目立っていた。
シーズン終盤によるマシンストレスがピークに達したか?
それでいてサーキットコースというグリップが格段に上がる場所だっただけに、駆動系などに負荷が集中したように思われる。
本戦でのトラブルによる修理は1回5分間だけ認められているが、なんとか時間内に修復できた選手もいれば、間に合わなかったり再びトラブル発生で修理を行う事ができず、涙を飲んだ選手もいた。
勝つこと以上にマシン同士の競り合いを心から楽しみにしている選手や観客も多いだけに、来期はこうしたトラブルが減る事を強く願いたい。

どのカテゴリーでも、黎明期は今回のような混迷の時期を経験しているもの。
あのF1でもそうだ。
その都度、運営側、多くの関係者が反省点を洗い出し、話し合いながら解決策を見出し、大会をより良いものにしようと尽力してきた。
様々な問題点が浮き彫りとなった本大会だが、別の見方をすれば今後さらに良くするヒントを提示されたと言える。
来年はどこの国での開催となるかわからないが、これまでの反省点を生かし、世界一決定戦としてさらにより良い大会へと進化させてほしいところ。
一ドリフトファンとして、これからも様々な提言をしていきたいと思う。

【取材 – 文 – 写真】
編者(REVOLT-IS)

【取材協力 – 問い合わせ】
FIAインターコンチネンタルドリフティングカップ(FIA Intercontinental Drifting Cup)事務局

編者
REVOLT-IS立ち上げの発起人。サーキット走行会や草レースなど経験が豊富で、スポーツ系チューニングやセッティングに強い関心がある。 サーキットやストリート、ドリフトなどの走りのイベントへ積極的に顔を出しながら、カメラを構えつつ様々な考察をする毎日。
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