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【学生フォーミュラ2018】NATSの新たな挑戦

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全日本学生フォーミュラ2018
いくつかの学校をピックアップして振り返ってみる。
今回はNATS – 日本自動車大学校だ。

東京オートサロン展示で話題の個性的なカスタムカー制作、EVやモータースポーツへの挑戦など、多くの話題を提供してくれる本学校では、自動車業界の即戦力となりえる人材育成のため、より実践的な授業を行う事で知られている。

そのNATSも、チーム名”Formula Factory NATS”として、学生フォーミュラには2010年から参戦を開始。
昨年2017年は総合5位、ICVクラス(710cc以下の4サイクルエンジンを使ったクラス)でも4位と、過去最高の結果を収めている。
そして2018年の今年、さらに上を目指していこうと、マシンに大胆な変更を施してきた。

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それがエンジン形式の変更。
昨年は4気筒エンジンだったが、今年は2気筒エンジンへのスイッチしている。
4気筒エンジンで素晴らしい成績を収めていただけに、この2気筒エンジン変更は大きなチャレンジだ。

もちろん理由がある。
過去最高の成績をあげた4気筒エンジン仕様のマシンでも、トップからはまだ2秒遅れている。
しかし、去年までのデータを分析した結果、4気筒エンジン仕様では、これ以上の伸び代が少ない事がわかった。
優勝を目指し、さらなるパフォーマンスアップを図るにはどうすればいいか?
その答えが、2気筒エンジン仕様というわけだ。

学生フォーミュラへ参加マシンに搭載されるエンジンでは、単気筒、2気筒、4気筒と様々。
気筒数の増減によるメリットデメリットを列挙してみる。

[気筒数を減らした場合]
・軽量、コンパクトにできるため、リア周りの設計自由度が増す。
・低速トルクが上がる(同排気量ならという前提)
・エンジンの振動が増え、車体や他の補器類に影響が出やすい。
・パワーが上げにくい。
[気筒数を増やした場合]
・エンジン振動が減る、パワーを上げやすくなる。
・1気筒死んだとしても、他の気筒で走行を継続する事ができる。
・機構や燃焼マネジメントが複雑になる。
・重くなる。

恐らく今年の”Formula Factory NATS”メンバーは、マシン全体のトータルバランスの底上げを狙ったのだろう。

古いF1ファンなら、1991年~1992年のマクラーレンとウイリアムズ、ホンダV12エンジンとルノーV10エンジンを思いだして頂きたい。
エンジンパワーで勝るマクラーレン・ホンダに対し、車体とエンジンとの総合性能でグランプリを席巻したウイリアムズ・ルノー。
エンジンパワーだけで勝てる時代が終わった年と言えるだろう。
以後、フェラーリも伝統のV12を捨てV10へ以降、しばらくV10時代が続く事となる。

NATSで話を聞いていて、ふとそんな事を思い出した。

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だが、エンジン変更は言うほど簡単ではなかったはず。
前年までのデータも、使えるものはそう多くなかったはず。

目標は前年のマイナス2秒。

重量バランスも変わり、振動も増える。
低下するパワーをどう補うか?
メリットである軽量とトルクを生かしたマシンに仕上げ、それでいて前年より良いタイムを出す必要がある。

車体全体から細部に至るまで、大幅な見直しが必要になった事だろう。
かなりの仕事量になったはずである。

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そして大会当日。

これまでの学生達の苦労と努力を嘲笑うかのように、天候は大荒れ。
”Formula Factory NATS”の出番は最後。
プラクティスエリアでセッティングに十分時間を割きたかっただろうが、この時も天候に翻弄されてしまった。

出走時も、ゲリラ豪雨と晴天が交互にやってくるほど目まぐるしく変わる。
走行中断も頻繁に発生し、せっかく温めたマシンやタイヤもすぐに冷えてしまう。
そんな中、多くのチームが、ドライセッティングにレインタイヤという妥協した状態で走らざるえなくなるほどで、傍から見ていて気の毒になってきた。

晴れるのか?降るのか?お願いだからどちらかにして欲しい。
そう思ったチームも多かった事だろう。

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ウエット路面を軽快に駆け抜ける”Formula Factory NATS”のマシン。
結局ドライ路面で走ることは叶わなかった。

チームメンバーはかなり悔しい思いをしてるかと思ったが、意外にもチームリーダーは満足気だった。
ドライバーから、”ウェット路面でもとても乗りやすく、気持ちよく曲がってくれる”、”ニュートラルステア”だと高評価をもらったそうだ。
まさに狙い通りのマシンであり、完成度も100%だと誇らしげに語ってくれた。

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最後の燃費、騒音検査でも好結果を叩きだしたようで、観客スペースから見守っていたチームメンバーから、歓声が沸き起こっていた。
これまでの苦労が報われた瞬間だ。

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全てが終わり、締めを行っているNATSのテントに立ち寄ってみた。
制作に携わった学生達一人一人の挨拶を、端から伺っていた。
満足気な顔もあれば、泣きじゃくる顔もいる。
皆、それぞれ色々な思いで本大会を戦っていたのだろう。
誰もが、本当にいい顔をしていた。

そんな”Formula Factory NATS”は、最近、来年度卒業する先輩達から後輩達へ無事引き継ぎが終わり、新チームが結成された。
既に来年に向けて、マシンコンセプトも確定した様子。
来年はどのようなマシンを仕上げてくるだろう?
”Formula Factory NATS”の躍進に注目だ。

【取材 –文 – 写真】
編者(REVOLT-IS)

【取材協力 – 問い合わせ先】
Formula Factory NATS
NATS
全日本学生フォーミュラ

編者
REVOLT-IS立ち上げの発起人。サーキット走行会や草レースなど経験が豊富で、スポーツ系チューニングやセッティングに強い関心がある。 サーキットやストリート、ドリフトなどの走りのイベントへ積極的に顔を出しながら、カメラを構えつつ様々な考察をする毎日。
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