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時を超え、IMSA Z32フェアレディZが復活へ

日本ではバブル景気が最高潮だった1990年台。
北米では、IMSAと呼ばれた耐久レースシリーズが大人気だった。
世界三大耐久レースの一つに数えられるデイトナ24時間がシリーズに組み込まれていたIMSAには、世界の自動車メーカーが注目。
スポーツプロトタイプカークラス(グループCカー、IMSA GTPカー、SWCカー)を頂点に、市販車のシルエットを貴重としたGTカークラスのマシンが非常に多く参戦しており、大変な活況だったという。

北米マーケットを重要視する日本の自動車メーカーも、そんな人気のレースを見逃すわけにはいかない。
現地法人が現地レーシングチームと組む、レース活動を委託して参戦する等、各々様々な体制でIMSAに挑んでいった。

今回紹介するのは、そんなマシンの一台だ。

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日産フェアレディZ(Z32) – 300ZX。
1989年、アメリカでの過去のフェアレディZ人気を背景に登場したこのZ32型も、瞬く間にアメリカのスポーツカー好きを虜にしていった。

そんなZ32がIMSAに登場したのが、翌年の1990年。
制作は、アメリカ インディアナポリスに拠点を構えるFabcar Engineering。
チーム運営、メンテナンスをクレイトン・カニンガム・レーシング(CCR)が担当する事に。
当初は熟成に手間取っていたものの、ベースを2by2仕様へ変更したりと全面的な見直しを図りながら熟成していった結果、1992年、1994年に見事シリーズチャンピオンを獲得した。

その後、このマシンはSuper GTの前身である全日本GT選手権(JGTC)に上陸。
1996-1997年にレーシングチームチーム・ルマンのメンテナンスでレースを戦う事となった。

今回紹介するZ32は、そのJGTCを戦ったマシンそのもの。
しばらくチーム・ルマンのガレージ隅で眠っていたところ、現在のオーナーさんがその車体を購入。
数度のリビルドの末、現在の状態まで復元したという。

そのオーナーさんとは、御殿場で自動車やレースカーといった部品設計、製造業を営む(株)PEAKS代表の細井 氏。
小さい頃からグループCカーといったレーシングマシンが大好きで、富士スピードウェイ、そしてレース村が身近にあった事もあり、若い頃から様々なレーシングカーに触れ合ってきた。

そんなある日、とあるベテランレースエンジニアの方と居酒屋で談笑していたところ、このZ32購入の打診を受けたという。
そこでチーム・ルマンに問い合わせところ、かなりの好条件で購入できる事がわかり、憧れていたレーシングマシンを所有できるまたとない機会だからと、購入を決意した。

購入当初の車体は埃を被っており、一部フェンダーの欠損や車体側のサビがいくつか見られた。
エンジン、タイヤまで当時のまま。
これをどうやってリビルドしていこうか思案したところ、以前から交流のあった御殿場のトランジットエンジニアリングジャパンから、ぜひ一緒にやろうと協力を持ちかけられた。
トランジットエンジニアリングジャパンは、新旧フォーミュラカーやツーリングカーといった各種レーシングマシンの販売・整備等といった事業を手掛けており、レーシングマシンの扱いには多くの実績がある。
断る理由はない。
さっそくZ32をトランジットエンジニアリングジャパンへ持ち込み、リビルド作業が開始された。

素人目からすると、昔のレーシングマシンをリビルドするというのはかなり大変な作業に感じる。
まず部品はあるのか?という懸念を感じるが、そこは心配はない。
富士スピードウェイ周辺には、いわゆるレース村と呼ばれるエリアがある。
昔からレーシングマシンを製造、メンテナンスできる規模のガレージや、(株)PEAKSのようにレース用部品を作るのに長けた会社が多く存在する。
そういったところに依頼すれば、たいていの部品は作ってもらえる。

それより問題なのが、IMSA参戦時のレース資料が少ない事。
当時のスポンサーステッカー類の作成を試みたが、当初はかなり苦戦したという。
写真ではわからない箇所があったり、いざ出来上がったもののデザインが若干違っていたりと試行錯誤の連続。
幸いにも、国内外のZ32ファンからSNSを通して情報が寄せられ、なんとか形になってきた。

そうした多くの方々の支援、応援を受け、ようやくリビルド完了となったこのZ32。
その細部を見ていきたい。


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市販車も大柄なボディだったが、それさえも霞んでしまうほど、よりワイドで低く感じるこのボディ。
テールランプ周りがなければ、別の車かと思ってしまう。
車体は、鋼管パイプを組み合わせて構築されたスペースフレーム構造。
そこにエンジン、ギア、トランスミッション、そしてZ32市販車を模したグラスファイバー製ボディパネルを載せている。

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リアのアンダーパネル部アップ。
洗練しきっていないところが、いかにもアメリカ式を感じさせる。

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エアジャッキ導入口も健在。

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一体式フロントボディパネルを取り外した状態。
車体のスペースフレーム構造がよくわかるショットだ。

サスペンションは、Z32市販車ではマルチリンクだが、こちらはダブルウィッシュボーン形式。

上下に分かれた大型フロンントダクトとブレーキダクトが目立つ。

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真横からダクトを覗いてみる。
フロントダクトの一番下側から、ラジエターへ大量にエアを導く構造となっている。
ラジエターを通過したエアは真横へ排出される。

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エンジンは、IMSA初年度からしばらく搭載していた3リッターV6ツインターボ(VG30DETT)ではなく、インフィニティ向け4リッターV8(VK45DE)NAエンジンに換装されてる。
これは1995年のIMSAレギュレーションに合わせての対応。
ちなみにJGTCを走ったのもこの仕様で、当時はパワー不足が嘆かれていた。
もしJGTCにツインターボ仕様が導入されていたら、また違った結果となっていたかもしれない。

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アームやボールジョイント類まで綺麗にレストアされている。
このあたりもかなり状態がひどかったそうだ。

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運転席周りを覗いてみる。
鋼管パイプの上にカーボンファイバー製パネルを貼りつけ。
そこに、PIリサーチ製メーターパネルやポンプ類の起動スイッチ群、キルスイッチが設置されている。
ペダルは珍しい吊り下げ式だ。

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ミッションは右側のHパターン。
シフトリンケージがリアに伸びているのがおわかりいただけるだろう。
これは、一体となったデフとミッションをリアに置くトランスアクスル方式。
ちなみにR35GT-Rも同じ方式なので、機会があればそちらもぜひチェックを。

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車体後部へも冷却用エアが導入できるよう、運転席真横にこのようなエアダクトが設置されている。
その奥には、ヘッドサポートのない簡素なバケットシートが見える。
こうして見ると、まるでミッドシップカーのようなインテリアだ。

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リア周り。
縦横無尽に張り巡らされた冷却ダクトが目につく。
スペースフレーム構造、サスペンション構成、ミッションとデフの配置がわかりやすい。
ダンパーのスプリングなどにもサビが見受けられたが、東京発条(Swift)に依頼して修復された。

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燃料給油口のアップ。
V字形に左右に配置されており、ピットインの際、状況に応じてどちらからでも給油ができるよう配慮されている。
このあたりは、現代のレーシングカーと大きな違いはないようだ。

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オイルラインやフィルター部、シャフト基部に至るまで、手抜かりなく見事に仕上げられている。

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タイヤは当時のまま。
ちなみにこれは、ヨコハマタイヤのレース用レインタイヤだ。
最後にレースで使用してから年数がかなり経っているため、さすがにこのままでは使いものにならない。
ヨコハマタイヤに供給の打診をしたが、既に型がなく作れないという。
そのため今も、各方面にあたりながらタイヤの検討を進めている。


レースマシンに憧れていたオーナーさんの夢が叶ったと言える、このZ32のレストア。
だが一個人だけでは、ここまでの形にはならなかっただろう。
これは、レーシングカーのノウハウを多く持つトランジットエンジニアリングジャパンを始め、多くの部品製造を手掛けてきた各会社の協力あってこそ。
日本の物作りは廃れてきたと言われているが、なかなかどうして、優れた技術を持つ会社はまだまだあると感じた。
こうした会社が結集すると、世界に誇れる何かが作れそうでは?
そんな感じがしてならない。

このZ32を起爆剤に、日本のモータースポーツ文化に大きな動きが出来上がることを願ってやまない。

【取材 –文 – 写真】
編者(REVOLT-IS

【取材協力 – 問い合わせ先】
PEAKS RACING(オーナー)

【取材協力】
トランジットエンジニアリングジャパン(レストア作業、サーキット走行マネジメントを担当)
業務内容:レース参戦プランニング、レースサービス、レース車両のレンタル – 保守 – 運搬、レーシングカー販売など

編者

REVOLT-IS立ち上げの発起人。サーキット走行会や草レースなど経験が豊富で、スポーツ系チューニングやセッティングに強い関心がある。 サーキットやストリート、ドリフトなどの走りのイベントへ積極的に顔を出しながら、カメラを構えつつ様々な考察をする毎日。