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波乱連続の全日本学生フォーミュラ2018

20180915_全日本学生フォーミュラ

今でも若者が車に興味がない、離れていると言われている昨今。
これまで多くの車好きの若者を見てきた編者としては、そういった報道はほぼ偏見と見ている。

だが、日本のモノ作り減少という風潮。
これは、間違いなくその傾向へ傾いていると感じている。
身近でも自動車パーツ、整備ツールだけでなく、スマートフォン、パソコン、家電においても海外メーカーの名を聞くことが多くなってきた。
国内メーカーの事業縮小、海外企業への身売り、買収というニュースも目につくようになっており、業界側も危機感を募らせているに違いない。

だがそのような時代でも、次代の自動車業界を担う学生達は、自分達のやりたい事、未来のために懸命に勉強に取り組んでいる。
今まで磨いた力を社会で生かしてみたい、自分の考える車を作ってみたい。
そこには、今も昔も変わらず意欲溢れる若者達がいた。

そんな学生達が全国から集い、車作りを競い会う全国大会がある。

”全日本学生フォーミュラ”

本大会は、自分達で試行錯誤をしながら作りあげたオリジナルのフォーミュラカーを使い、様々な審査種目で高得点獲得を目指しつつ、他校と切磋琢磨を繰り広げている。
その主な目的は、学生達自身に実践形式でのモノ作りプロセスを経験させる事にある。
そうしてモノ作りの厳しさ、楽しさ、喜びを実感してもらう事で、創造性に溢れた技術者の育成を目指しているという。

今回、取材で訪れた全日本学生フォーミュラ2018最終日。
最後の1日に挑む学生達の奮闘ぶりを追いかけてみた。

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早朝7時。
パドックスペースとなっている駐車場区画では、既に多くの学生達が慌ただしくマシンの準備に入っていた。
それもそのはずで、最終日は7時半から最初の組が走行開始するとの事。
果たして睡眠はしっかり取れただろうか?

そして午後からの組や走行予定のない学校の学生達は、遅めの時間に登場。
比較的ゆったりと、それでいて確実に作業をこなしているような印象だ。

ちなみに今回の学生フォーミュラウィークは、台風などの影響もあって天気がコロコロ変わるイヤらしい状況。
前日もゲリラ豪雨のような雨に翻弄され、大会スケジュールも大幅変更を余儀なくされたという。
マシンセッティングもかなり悩まされ、本領発揮とまでいかない学校もあったようだ。

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本大会を走るフォーミュラカーはEVとガソリンエンジンの2クラスがある。
こちらはガソリンエンジン仕様。
ガソリン給油やガソリンを抜くのも、専用エリアで行われていた。
給油担当以外に消火器担当も配置しており、安全面への配慮も抜かりない。

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こちらはEVフォーミュラの充電エリア。
こちらも専用スペースが用意されていた。
ちなみに学生フォーミュラは回生ブレーキが許可されているが、時速5km以上での動作が条件となっている。
回生による充電を各学校がどのようにマネジメントしているか興味深いところだが、このエリアがそんなに混んでいなかったところを見ると、ほぼ必要な量の電力は確保できていたのかもしれない。

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各大学、大学校とも、前日までに多くの審査を受けている。
その内容は、マシンを実際に走らせる審査に加え、製造にかけたコストバランスやマシン設計、市場へのプレゼンテーションといった感じで多岐に渡っている。
詳細は公式サイトを見て頂きたいが、どれも社会では実際に求められる能力であり、どちらかと言えば経験が物を言う。
それを学生達がやるのだから、きっとかなり厳しい内容だったに違いない。

車検でも、結構な台数がNGになったと聞く。
てっきり温情処置があるのかと思っていたのだが、そこは人材育成という観点上、厳しく採点されている。
実際、過去に車検NGで走行できなかった学校もあったようだ。
ただ、時間内なら再び車検にトライする事が可能。
NG箇所についてもただダメと言うのではなく、その理由、改善方法について、車検員から具体的なアドバイスを学生達に伝えるのだという。
そういったアドバイスも参考に、なんとか車検をクリアしようと、ギリギリまで奮闘している学校もあったとか。

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走行開始前の最後のマシンチェック。
リラックスしているところもあれば、集中してマシンに張り付いているところもあり。
思いは様々だろうが、一年間やってきた事が些細な手抜きで無駄になるのはきつい。
大なり小なり、メンバー皆プレッシャーを抱えていた事だろう。

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コースでは、順番が来た学校から、自慢のマシンを次々とコースへ送り出している。
この時は雨は止んでおり、コースはほぼドライコンディション。
多くのマシンはスリックタイヤを装着しており、ドライセッティングが施されている。
後述するが、今回は走行時間でコース環境が目まぐるしく変化してしまう厳しい一日。
ドライ路面で走れた学校は、本当にラッキーだった。

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取材日当日はエンデュランスと呼ばれる審査競技のみ。
パイロンで作られた1周1,000kmの複合コースを、ドライバー2名が交代で10周ずつ走行する。
トータルの走行時間から、全体性能と信頼性を評価するという。

ただ速ければいいというものではない。
ゴールしてもマシンが正常な状態であり、かつ燃料や電気の消費量が少ない事も求められる。
マシンもさる事ながら、ドライバー二人の技量やチームスタッフとの連携、現場対応力も関わってくるため、なかなか一筋縄ではいかない。

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走行を終えた車両は、騒音や排ガス測定も行われていた。
走行結果が良くても、ここで結果が悪ければ下位の学校に逆転される事もありえる。
どのチームスタッフも、祈るような気持ちで測定の模様を眺めていた事だろう。
測定結果が良好だったところでは、観客スペースから歓声や喜びの雄たけびが聞こえてきた。

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観客スペースやコースサイドでは、参加学校の生徒達の姿もちらほら。
もちろん応援もあるが、他にも、チームスタッフがそれぞれの役割を持ってコース周辺を回っているところも。
モータースポーツではごく当たり前に行われている光景だが、広報用の写真撮影、他のマシンの観察、無線や携帯電話を使ってコース状況や他学校の様子報告といった感じで、皆真剣に作業をこなしていた。
かなり本格的だ。

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こちらは、リペアエリアでマシンの修理中の模様。
リアウイングが脱落したらしい。
走行時間に間に合わせようと、学生達が懸命に作業に当たっていた。

なるべくトラブルには会いたくないものだが、社会に出れば予想外のトラブルに会うこともしばしば。
今のうちにこういったトラブル対応を経験していく事は、社会に出てからの大きな財産となるはず。
貴重な経験を積めたと喜ぶべきだ。

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海外からも全日本学生フォーミュラへ数チームが参戦。
本大会の注目度の高さが伺える。
品質、完成度の高さに加え、斬新なアイディアが盛り込まれたマシンもありで、フォーミュラカーファンならばきっと見応えがあったに違いない。
チームスタッフの動きもプロのモータースポーツチームのようで、見学に訪れた学生達には良い刺激になった事だろう。
読めない天候、海外から参戦というハンデをものともせず、総合でも上位に食い込んできた。

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こちらはプラクティスエリア。
審査コースを走る前に、ドライバーやマシンの慣らしを行う事ができる。
当然、審査コースを後に走る組がここに多く集結しており、入念なチェックが行われていた。
この時はまだ太陽が出ており、ちょっと汗ばむような暑さ。
恐らくドライセッティングでの最終確認で、万全の体制が整ったはずなのだが。。。

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取材中、何度か豪雨に見舞われた会場。
コースコンディションもドライからセミウェット、ウェット、セミウェット、ドライと目まぐるしく変わり、走行を待つチームはセッティングに頭を悩まされる事に。
スタッフの中には”降るなら完全に降ってほしい”と漏らしていた者もいて、この時は、ドライセッティングに溝付きタイヤという組み合わせで出た学校も。

濡れた路面なら完全なレインセッティングにしたいが、セッティング変更には時間がかかる。
溝付きタイヤとはいえ、ドライセッティングでどこまでグリップが期待できるか?
ドライバーの技量、マシン性能の懐の深さが試される事になってきた。

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プラクティスエリアでも突然の雨に祟れ、対応に追われるチームも。
車内に雨が入らないよう、タイヤを冷やさないようにと、様々な対策、工夫が見て取れる。

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それでも本コースではなんとか走行を続けていたものの、午後2時、3時には雨量が激しくなり何度か走行中断に。
既に前日までの台風や前線の影響もあって、スケジュールが大幅変更。
全学校になんとか走行してもらおうと、主催者サイドでは表彰式や懇親会までも中止にして走行時間を確保するようにしたものの、このまま中断が長引けば夜になってしまう。
最悪、中止の2文字もよぎってきた。

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だが幸い、ぎりぎりの時間で雨が小降りに。
ここぞとばかりに、最後の組をコースに送りだした。
とは言えご覧の通りのウォータースプラッシュ状態。
成績うんぬんよりも、もう雨は降らないでほしい、全員走らせてほしいと願わずにはいられなかった。

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幸いにもその後天候は回復。
さすがにドライ路面での走行とはいかなかったが、雨で待機状態だった組も、無事に走行を終える事ができた。

総合結果は以下のリンク先をチェックしてほしい。
最終結果
各賞結果(英語)
エンデュランス結果
燃費結果

ご覧の通り、エンデュランス自体は昨年総合優勝した京都工芸繊維大学が1位だったものの、静的審査(コストと製造、プレゼンテーション、デザイン)で大きくスコアを伸ばし、動的審査(アクセラレーション、スキッドパッド、オートクロス、エンデュランス、効率)でも安定したスコアを記録した大阪大学が優勝した。

この結果から見ても、単に走りの性能だけでなく、車というモノ作りそのものを総合的に評価しようとする、全日本学生フォーミュラの目的、概念をよく表していると言える。

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なんともやるせない事に、大会終了間際になって天候も大きく回復。
明るくなり青空も見える有様だ。
彼方に見えた虹を見ながら、学生達は何を思った事だろう。

そんな中、各学校のテントでは、撤収や終了の挨拶を進めていた。
やりきった顔をする者もいれば、悔し涙に暮れる者もあり。
表情は様々だ。

雨という要素、コンディションがコロコロ変化するという難しい環境下で行われた最終日の全日本学生フォーミュラ
どちらかと言えば、マシンの出来以上に人の要素が強く影響したと言える。

本当ならドライ路面で走りたかった事だろう。
だが、こんな環境下でマシンを走らせる経験は、臨んでもそう出来るものではない。
どうしてこうなったか?あの時こうすれば良かったかも?
様々な思いを巡らせながら自己分析をして、今後の自分自身の糧にしてほしい。

今回は各学校の思い、技術的な側面には触れなかったが、それはまた次回の記事で。

【取材 –文 – 写真】
編者(REVOLT-IS)

【取材協力 – 問い合わせ先】
全日本学生フォーミュラ

編者
REVOLT-IS立ち上げの発起人。サーキット走行会や草レースなど経験が豊富で、スポーツ系チューニングやセッティングに強い関心がある。 サーキットやストリート、ドリフトなどの走りのイベントへ積極的に顔を出しながら、カメラを構えつつ様々な考察をする毎日。
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