ことメーカー系自動車ディーラーと言えば、一般のイメージとしてはこんな感じだろうか。
”すぐに新車を売りつけてくる”
”そこで買った車しか整備を受け付けない”
”古い車の修理はお断り”
”たかが配線修理だけで終わる作業でも、部品やAssy交換しか対応してくれない”
こと一台の車を長く大事に維持していこうという方など、そうした自動車ディーラーの対応に不満を持つ方が多い。
そのため、ディーラー離れを加速させる要因にもなっている。
だが自動車ディーラーも、そんなところばかりではないようだ。
中には、提携店と連携して親身に対応してくれるところもあれば、今回紹介するネッツトヨタ富山のように、モータースポーツ活動から旧車レストアまで行いながら、様々なニーズに応えれるところもあるという。
まさに捨てる神あれば拾う神もある。
自動車ディーラーも捨てたものではない。
そんなネッツトヨタ富山。
オートモビルカウンシル会場内のブースには、50周年記念事業車として約1年でレストアを完成させた初代チェイサー(MX41)が、誇らしげに展示されていた。
今回そのチェイサーを見ながら、ネッツトヨタ富山の取り組みについてご紹介していきたいと思う。
ネッツトヨタ富山の創業は昭和43年。
従業員数は約270名。
富山県内に8店舗を構える老舗自動車ディーラーだ。
そんな老舗ディーラーがレストアを始めるキッカケとなったのが、創業40周年記念の社内事業として始めたトヨタ・パブリアのレストア。
当時の自社技術の集大成として仕上げられたそのパブリカ、それが思いのほか好評だった事もあり、また旧車をレストアしてほしいという要望もあった事から、それならばと始めたという。
そのレストアサービス、現在はネッツトヨタ富山のスポーツ部門を担うGR Garage富山新庄店で請け負っている。
これまでにトヨタ・パブリカやトヨタ・スポーツ800、他メーカーでも、カルマンギアやMG-B、オールドポルシェ911といった往年の名車レストアも請け負ってきており、その完成度の高さ、いわゆるディーラークオリティには、作業を依頼されたどのお客様も大変満足されているとか。
一口に旧車レストアと言っても、ただ部品交換をするだけで終わるものではない。
新品部品はまず手に入らない。
そうなると、ヤフオクやお客様が独自に入手した中古部品を修理して使うしかなくなってくる。
また不具合が発生したときも、最新のOBD2対応テスターなんてもちろん使えない。
各部を一つ一つ、直に触りながら不具合箇所を特定するしかない。
それらは、高いエンジニアスキルと豊富な経験が必要となってくる作業であり、若いエンジニアにはなかなか骨が折れるところである。
だがこうしたレストア作業で経験を積んでいく事が、自社技術の向上とメカニックの育成に効果的だという。
実際一般整備の場でも、こうした効果は出ているそうだ。
レストア事業だけでなく、モータースポーツ活動にも力をいれているネッツトヨタ富山。
その範囲も、サーキットからラリーと実に幅広い。
そういった現場へ自社メカニックを携わらせる事で経験を積ませていきながら、自社技術の向上と、より質の高いサービス提供を目指しているそうだ。
他にも、富山県内で車と触れ合える様々なイベントを開催したりするなど、より多くの方々に自動車の楽しみ方を伝えていこうと奮闘されている。
ブログを見ると、車と触れ合っている様子や車と関わっている仕事の事が楽しく書かれており、とても親近感が沸いてくる。
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※写真提供:チーム轟 広報(写真の無断転載を禁じます)
そして自社だけでなく外部支援、特に未来の自動車業界を担う若者の応援にも、ネッツトヨタ富山は力を入れている。
つい先日も、モンテカルロ・ラリー・ヒストリック2019への参戦を目指しているチーム轟 所属の学生達を整備合宿として受け入れ、旧車整備の指導を行ってきたばかりという。
チーム轟とは、東京大学とホンダテクニカルカレッジ関東の学生達による合同プロジェクトで、その内容は、資金調達から参加車両の整備、海外ラリー参戦まで全て学生達で行わせるというかなり厳しいもの。
先にも書いた通り、旧車整備は高いエンジニアスキルと経験が必要とされる。
そこで、旧車レストアやモータースポーツ経験も豊富なネッツトヨタ富山が人肌脱いだというわけだ。
近年深刻化してきている人手不足。
こうした活動が、次世代のメカニック志望を育てていく事に繋がる。
そこには、自動車業界全体の事を考えたネッツトヨタ富山の思いを感じ取る事ができる。
ただ車を売る事ばかりではなく、車文化や車に関わる事への楽しさまで伝えようと精力的なネッツトヨタ富山。
まさに、アクティビティという言葉がぴったりハマるメーカー系自動車ディーラーと言える。
こんな考えを持つディーラーが日本にもっとたくさんあれば、日本の車文化はより高まったのではないか?
そう思うと、少数派な現状に悲しささえ感じてくる。
このような貴重な存在。
地域の車好きな皆様には、その存在をぜひとも大事にしてもらいたいと願っている。
【取材 –文 – 写真】
編者(REVOLT-IS)