JTCC を戦ったトヨタ・コロナエクシヴを振り返ってみる
JTCC とは、1994年から1998年まで開催されていたモータースポーツカテゴリーで、当時の国際自動車連盟(FIA)で規定されたツーリングカークラス2規定に沿った、4ドア車ベースのマシンで争われた。
2ヒート制のスプリントレース形式だったが、まさに喧嘩バトルと言える、激しく、荒れたレース展開で、ドライバー同士のもめ事や規則スレスレを狙った開発競争の過熱化もあり、色々な意味で見応えがあった。
今回、こちらのトヨタ・コロナエクシヴを見ながら、当時の様子を振り返っていく。
シャコタンブームの再燃もあってか、JTCCマシンに注目する車好きは多い。
18-19インチの幅広大径タイヤを収めつつ、車高を落とせるよう作り直したフェンダーアーチは切れ角がほとんど期待できないほどで、タイトターンの多い市街地レースでは、フェンダーをカットして臨んだチームもいたとか。
これだけ落としても足回りがしっかり機能するのは、サスペンション取り付け位置に対して、最大20mmの移動が許されていたから。
これは市販車では真似できない。
ボディは年を追うごとに変化していった。
1994年は市販車の外観維持が義務付けられたが、コロナエクシヴが登場する1995年はリアウイングのみ装着可能に。
ただ1年に1形状しか許されず、角度調整もNGという制約が課せられた。
サーキットには様々な性格があり、ウイングを立てたいところもあれば、寝かせたい所もある。
そこで、どのようなウイングで戦うかを決めるべく、各チームではどのサーキットを捨ててどこを重視するかといった戦略が立てられ、車両開発が進められた。
そこから1996年までは大きな変更はなかったものの、1997年以降、今度はオーバーフェンダーの装着が可能となり、トレッドも1,800mmまで拡大出来るようになった。
さらにリアウイングも、ルーフ高までなら大型化出来るようになり角度調整もOKと、こちらも大きく変貌した。
搭載される2リッターNAの3S-GEエンジン。
8500回転のレブリミッター装着が義務付けられていた。
特長的なのは吸排気レイアウトで、多くのマシンでは、市販車用エンジンを前後逆にして搭載する”リバースヘッド”方式が採用された。
これはバンパー側に吸気口を、バルクヘッド側を排気口とするレイアウトで、空気抵抗による圧力を使って空気を強制的に押し込む”ラム圧”効果が期待できる。
また排気口が後ろにあるため、従来のようにエキゾーストマニホールドとマフラーをエンジン下部へ通す必要がなくなる。
そのぶん、エンジン本体をより低くマウントできるようになる。
現実にはオイルパンやステアリングユニットがあるため極端なローマウントは難しいが、各チームではその恩恵をなんとか生かそうと、潤滑方式はドライサンプに、ステアリングユニットもローマウント対応に新設計するなど工夫が見られた。
こうして開発されたエンジンは、最大340馬力を絞りだしたとか。。。
当時、前面投影面積の小さい車のほうがストレートスピードがアップすると言われており、実際トップスピードは伸びたという。
しかしコンパクトな車体では、理想の重量配分やエンジン配置、低い車高とそれに合わせた最適なサスペンションを実現させるのが困難。
そこで、車幅は大きいが全高が低く、メカ配置の自由度が高い、コロナエクシヴやホンダ・アコードといった3ナンバーボディの車が選ばれた。
完成直後のテストではストレートスピードの落ち幅は少なく、逆にコーナリングスピードが上がった事でトータルのパフォーマンスが向上。
それが、1995年以降の快進撃へと繋がっていった。
2017年現在、現存するJTCCコロナエクシブは、”つちやエンジニアリング”が保有する1台のみと聞く。
また何かのイベントで展示される事を期待したい。
【文】
編者(REVOLT-IS)
【写真協力】
やまちゃん