静岡大学 SUMの2023年 ~ 学生フォーミュラ
今年の学生フォーミュラ2023の戦いの模様を、参加チームの中からピックアップしてお送りする。
今回取り上げるのは、静岡大学 浜松キャンパスからエントリーのSUM。
EV初年度となった昨年は車検を通過できず涙を飲んだが、今年はそのリベンジを果たせるか?
昨年と打って変わってド派手なエアロとカラーリングを身にまとった今年のマシン。
特に、巨大な翼端板に描かれた富士山とスポンサーロゴは広告塔としての効果もありそうだ。
全長は500mm近く伸び、反面全高は150mmほど低くなっているが、これはエアロパーツ有無の影響だろう(昨年型はエアロレス仕様)
ホイールベースも僅かに伸びているが、前後トレッドは170mmほど狭められている。
フロントトレッドだけ僅かに大きいようだ。
車重は公表された数値だと30kg近く軽くなってて驚いたが、どうやら誤記との事で、実際は昨年型より重くなっているという。
前後重量配分もリア寄りで、その割合も大きめのようだ。
モーターはヤマハ製を縦置きに搭載。
バッテリーはリチウムイオンポリマーを採用。
駆動系はFCCのLSDにシャフトドライブで、昨年の不等長から等長ドライブシャフトへ変更されている。
さらにバッテリーの消費量が増える事を考慮し、新たにDC/DCコンバータを搭載。
前後異形サイズのタイヤに、冷却性能の向上にとリアサスペンション背後にラジエーターを配置するなど、独自性も兼ね備えた設計がなされている。
シェイクダウンは6月に完了。
以降は試走会で順調にマイレージを消化するなど、昨年のリベンジに向けて好発進を切った。
まずは、動的審査の前週に行われた静的審査の結果を見てみよう。
※カッコは2022年の順位
- プレゼンテーション:29位(30位)
- デザイン:14位(25位)
- コスト:58位(27位)
最初にプレゼンテーションだが、スポンサー企業の協力で行った模擬訓練や資料作成などの成果が出たようで順位をアップ。
チームでは、準備を進めてきた担当者の頑張りを評価していた。
同じく、順位をあげたデザインでは独自性を評価されている。
さらに、それを審査員に対して細かく説明できるよう、チームでは事前準備と模擬訓練を重ねてきたという。
最期にコストだが、こちらは提出書類の不備でペナルティが課される結果に。
その原因としてチームのノウハウ不足を上げている。
多くの指摘をもらいチームも落ち込みはしたが、反面、リアルケースシナリオやスタティックフォトといった必要書類の作成では多くの経験を積めたようで、来年に向けて期待の持てる状態になっているようだ。
ここで話を少し脱線。
学生フォーミュラ各チームでは、ブログやSNS、WEBサイトを通して様々な情報を発信しているが、中でもSUMのブログがとてもユニークで面白いと評判となっている。
一見、ふざけた言い回しが乱立しているように思えるが伝えたい事はしっかり盛り込まれており、最後まで読者を楽しませながら読ませていく構成でまとめられている。
「チームのありのまま」を多くの方に知ってもらおうという主旨で運営されており、更新は編集長含め6人が毎日持ち回りで担当。
その他は、状況に応じて部員を選出して書かれている。
スポンサー企業さんも楽しまれているようで、企業訪問の際には必ず話題にされるという。
話を戻し、ここからは動的審査の結果を見てみよう。
※カッコは2022年の順位
- アクセラレーション:19位(-位)
- スキッドパッド:23位(-位)
- オートクロス:25位(-位)
- エンデュランス:27位(-位)
- 効率(燃料または電力消費量):4位(-位)
【総合結果】
27位(39位)
車検では若干の問題で予定通りに運ばなかったものの、今年はEVへ転向してから初めて通過。
その後、走行直前に高電圧へ入らない問題や、フロントウイングの路面干渉で外す事を余儀なくされたが、まずは全審査項目完走を目指して順調に走り始めた。
全体的に順位はまずまずだが、昨年のEVクラス優勝チームを上回るセクションもあったりで、初めて動的審査に辿りついたチームとしては上々の結果だろう。
その勢いのまま、エンデュランスへ。
最初の10周では安定した走りを見せており、順調に周回を重ねていた。
そしてドライバー交代。
無事にスタートを切れたと思いきや、3周目に突如パワーが無くなりストップ。
再始動を試みるもパワーは戻らずタイムオーバー。
そこでリタイヤとなってしまった。
チームメンバーにとっても衝撃だったようで、放心状態や涙ぐむ者まで様々。
リーダーも涙目で悔しさを押し殺していたが、それでもインタビューでは「みんなよくやってくれました!」「最高の仲間達です!」とメンバーを称えるコメントで締めてくれた。
チームの雰囲気はとても良く、多くの支援企業にも支えられてステップアップしているSUMチーム。
EV初完走に向けて、益々期待が高まりそうだ。
【取材・文】
編者(REVOLT-IS)
【取材協力】
静岡大学 SUM
公益社団法人 自動車技術会