帝京大学 帝京フォーミュラプロジェクトの2023年 ~ 学生フォーミュラ
今年の学生フォーミュラ2023の戦いの模様を、参加チームの中からピックアップしてお送りする。
今回取り上げるのは、帝京大学 宇都宮キャンパスからエントリーの帝京フォーミュラプロジェクト。
昨年は抜群の操縦性と安定性を武器に日本自動車工業会会長賞を受賞、総合18位に躍進したが、今年はどこまで登りつめるか?
今期のマシンは一定の成果をあげた昨年型を基準に、さらなる軽量化と重量配分の見直しを実施。
ホイールベースとトレッドは同じながら全長が若干短く、全高が高くなっている。
今年の仕様では重くなる可能性もあったが、マフラーやアップライト、ペダルに至るまで素材や形状を細かく見直す事で約20kgのダイエットに成功。
去年なみに抑える事ができたという。
また前後重量配分は、去年の50対50から若干リア寄りとなっている。
外観から見ると、低くレイアウトされたダンパーが目立つ。
当然サスペンションジオメトリーも変更されているが、それによる操縦性の変化が気になるところ。
シェイクダウンは、昨年から一ケ月早い6月30日に完遂。
直後の試走会ではトラブルで満足に走れなかったものの、急遽実施した学内試走では順調にマイレージを消化。
途中、ラジエータが路面に接触するトラブルがあったものの、ここでドライバーから太鼓判が押されるほどのベストセッティングを見出す。
以降、シャシーアライメントの調整しつつ大会直前までテスト走行を実施。
万全の状態で大会へ乗り込んだ。
まずは、動的審査の前週に行われた静的審査の結果を見てみよう。
※カッコは2022年の順位
- プレゼンテーション:40位(37位)
- デザイン:33位(35位)
- コスト:58位(41位)
事前の書類審査はノーペナルティで通過。
前年より順位をあげた項目もあるが、残念ながら平均点を下げてしまった。
まずコストについては、車両全体のコストがオーバーしてしまい大幅減点。
プレゼンテーションは独自性あるものと評価を受けたが、利益を生み出す道筋への詰めが今一つという結果となった。
唯一順位をあげたデザインでは、マシン開発へのアプローチを上手く資料に落とし込んだ事で一定の評価を得ている。
しかし、細部や開発過程の情報量が少なすぎるとの指摘。
これは、マシンのポテンシャルが高い事を審査員が見抜いたうえでの指摘であり(つまりもったいない)、その事は、この後の動的審査で証明される事になる。
次は動的審査の結果を見てみよう。
※カッコは2022年の順位
- アクセラレーション:16位(19位)
- スキッドパッド:6位(20位)
- オートクロス:11位(33位)
- エンデュランス:17位(13位)
- 効率(燃料または電力消費量):23位(13位)
【総合結果】
18位(18位)
今年の車検はまずまずで、特に大きな問題もなくクリア。
幸先良いスタートで動的審査へ進む事が出来た。
アクセラレーションではミスがあったものの、それでもポジションアップ。
スキッドパッド、オートクロスではコンセプトに掲げた”自由自在”を体現したマシンで大幅タイムアップ。
エアロレスながら全体的に良く踏めており、速度も十分乗っていた。
エンデュランスでも快走を見せており、優勝争いをするチームからも注目を集めていた、
時にコースオフやパイロンタッチする場面があったが、マシンの問題というより暑さによる疲労蓄積が原因だった様子。
その事はリザルトにも表れている。
昨年と変わらない総合順位だったものの、マシン性能やチーム力の高まりを印象付ける結果だったように思う。
ここまでやり遂げてきた事は、チームにとって大きな進歩といえるだろう。
ただ来年以降、総合順位を上げていくなら静的審査の向上は必須課題。
物作りや売れる製品開発とはどういう事か?を、今一度振り返ってみる必要があるかもしれない。
後を受け継ぐ後輩達はどのようなアプローチを見せてくれるか?
今後に注目したい。
【取材・文】
編者(REVOLT-IS)
【取材協力】
帝京フォーミュラプロジェクト
公益社団法人 自動車技術会