EJ20ファイナルエディションとスバルのこれから
東京モーターショー2019の取材記事。
トヨタとの資本提携強化が発表されたばかりのスバルブースでは、歴代車種の心臓部を担ってきたエンジン”EJ20”最終仕様を搭載した”WRX STI EJ20 ファイナルエディション”のプロトタイプモデルが展示されていた。
そこで運よく開発部署の方と邂逅。
その時の話を交えながらEJ20の事、今後についてまとめてみた。
このエンジンの誕生は1988年。
初代レガシィに搭載されて以降、実に30年近く開発、生産されてきた。
10万km連続走行による世界最高速度記録の樹立、WRC世界ラリー選手権での連続タイトル獲得、ニュルブルクリンク24時間レースでのクラス連覇。スーパーGTでの活躍などなど。
様々なステージで鍛えられたその技術は、スバルが送り出す多くの車達に生かされている。
しかしその道程は簡単なものではなかった。
振り返ってほしい。
この30年で自動車社会は大きく変化してきた。
それにより法令も変化し続け、車やエンジンに対する要求も厳しさを増し続けている。
環境に有害な排ガス成分の除去、燃料やオイルなどの消費を抑え、効率と最適化を最優先する時代へ。
多くのメーカーがこの流れにシフトしつつあり、その一環で、対応困難と判断された名車、名エンジンが生産終了という苦渋の決断も下されてきた。
だがスバルはEJ20を継続開発する事を決めた。
当時の設計者も、まさかこんな厳しい時代まで延命するとは夢にも思わなかっただろう。
基本設計は、30年前とほとんど変わらず。
それに対してパワーやトルク、振動、静粛性、低燃費、排ガス濃度の低下といった各々が相反する要素を、今の時代に合わせて最適化しなければならない。
なにより水平対向エンジン自体、あとはポルシェくらいしか製造していないため、他メーカーをお手本とする事も出来ない。
全て、独力でで難題を解決していくしかない。
本当に、よくここまで進化させてきたと思う。
そうして毎年、重箱の隅をつつくような改良がなされてきたが、ここにきてそれも限界に。
これ以上の改良は困難と判断され、今回が最後のEJ20とした。
これまでの集大成が詰め込まれた究極のエンジン。
プレミアがつくことは必至だろう。
これからオーナーになる方は、ぜひ大事に乗ってもらいたい。
さてそんなスバルだが、ファンにとって不安を感じる話題がある。
先に書いたトヨタとの資本提携強化がそれだ。
傘下となった事で多くのファンからは”らしさ”が無くなると嘆きの反応が見られる。
果たしてそうだろうか?
いや、その問いにはNoと答えたい。
一番の理由は、フルラインナップメーカーのポジションに拘る理由がなくなった事だ。
開発現場ではこう認識されているという。
”これでうちはプリウスを開発しなくてよくなるだろう”。
例えば、これまで他社のEV、ハイブリッドカーに対抗するため同じカテゴリーの車を独自開発してきたが、これからはそのポジションをトヨタに委ねるか、OEM供給で販売するだけでいい。
そのぶん、スバルらしい車開発だけに注力すればいい。
つまり、グループ内のメーカー同士がそれぞれの得意な分野、築き上げてきたブランドを生かした車を開発していくスタイルになる考えだ。
ちなみに、お話を伺った方はラリー競技で活躍していた頃に入社され、それ以来一貫して水平対向エンジンを開発してきたという。
トヨタ傘下になった事もマイナスと考えておらず、”今後が楽しみです”と楽しそうに話されていた。
またチューニングカーファンにも理解を示してくださり、さらにWRCの話題も振ってみると、”そうなんですよ!トヨタさんがあれだけ盛り上げて下さっているのでウチもいずれはやりたいですよねぇ”と笑顔でおっしゃってくれた。
【取材 –文 – 写真】
編者(REVOLT-IS)
【取材協力 – 問い合わせ先】
スバル
東京モーターショー事務局