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S耐マシンとチューニングカーとの接点を探る

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ピレリスーパー耐久シリーズ2018 第5戦
もてぎスーパー耐久レース 5Hours Race

耐久レースらしい逆転劇で 3号車エンドレス GT-Rが総合優勝を決めたわけだが、その他のクラスも、スピード、旋回性、燃費、耐久性と、各車それぞれの特徴を生かした戦略で、素晴らしいレース展開が繰り広げられた。

そんなスーパー耐久レース、通称S耐
REVOLT-ISでは、チューニングカーに近い存在である市販車改造クラスへの参戦マシンに注目。
エアロパーツや使われている部品、内装やタイヤなど、チューニングやカスタマイズに参考になりそうなものを探ってみた。

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市販車改造クラスのマシンは、チューニングカーで言うところのライトチューン + αといったところ。
その多くは、一般のチューニング界隈でも馴染みのあるパーツ、技術が使われている。

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1番上から、エアロパーツメーカー「バリス」のエアロキットを装着した三菱ランサー・エボリューションX。
2番目は、総合カスタムメーカー「ダムド」のエアロキットを装着したスバルWRX STI。
3番目は、エアロパーツメーカー「イングス」のエアロキットを装着したトヨタ86だ。

これらエアロキットは、一部ストリート向けに再設計したものもあるが、基本的にはストリート用エアロとして我々も普通に購入する事ができる。
VARISDAMDings

500km近い長丁場をレーシングスピードで駆け抜けるS耐マシン。
エアロパーツにかかる空力的負荷はかなりのもので、生半可な品質では歪みや破損を起こしやすい。
恐らくS耐の主催サイドでも、中途半端なエアロパーツ装着を禁止にしているはず。
それだけに、1レースをノントラブルで走り抜けたS耐マシンのエアロパーツは、その品質と高い剛性が保証されたと言っていいだろう。

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剛性と言えば、このランサー・エボリューションXとマツダ・ロードスターに装着されたストラットタワーバーにも注目したい。
チタンの焼き色が実に綺麗だが、もちろんこれらもチューニングパーツとして市販されている。
ランサーエボリューションX(オクヤマ)
マツダ・ロードスター(オクヤマ)

ストラットタワーバーは剛性をあげてサスペンションの動きを良くする効果があるが、特に競技車両では重量がかさむのはなるべく避けたい。
でもチタンならば、鋼鉄製に比べ半分近く軽くする事ができ、それでいて強度はアルミの約2倍。
競技車両にはもってこいだし、チューニングカーでもその恩恵は十分受けられる。

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こちらのトヨタ86のブレーキキャリパー。
ブレーキ系メーカーADVICSの製品だ。
アフターパーツとしてブレーキパッド開発、販売のみを展開しているが、カーショップのいくつかでは、AVICSよりOEM供給を受けたり共同開発したブレーキキット販売を行ってところもある。
耐久レースという長丁場では、ブレーキは異常に酷使される。
そんな中でも、出来れば交換、調整なしのまま、レース最後まで安定した制動力が得られるようにしなければならないため、ブレーキ管理はかなりシビアだ。

チューニングカーでの理想は、ざっくり言えばよく効きよく持つ事。
仮にブレーキ交換なしで優勝したS耐マシンを見かけたら、どこのメーカーの製品なのかチェックしてみるのも面白いだろう。

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S耐マシンの室内。
ドライバーの命にも関わるロールケージが縦横無尽に張り巡らされており、フロアカーペットや遮音材、不要なシート類は綺麗に取り払われている。
一見、市販車からかけ離れているように見えるが、運転席まわりは内装が多く残されており面影がある。

よく見るとステアリングは市販品。
シフトノブも、純正品や市販されているチタンノブが装着されているのがわかる。
J’s Racing
KEYS

そして、シートやシートベルトも競技用となっているが市販品であり、こちらも誰でも購入可能だ。
RECARO
シュロスレーシング

内装はドライバーの嗜好がわかれるところだが、どんなパーツがどのように付いているか、といった視点で自分に置き換えて見てみるのがいいだろう。

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各車のエンジン。
先にも書いたが、S耐の市販車改造クラスはエンジン本体の改造が認められていない。
やれる箇所と言えば、吸排気チューニングとコンピュータチューニング、ターボ車であればブースト制御といったところ。
あとは、オーバーホールや各パーツのメンテナンス、消耗品の交換をしながらコンディションの最適化を図るほかない。
S耐ではレギュレーションでやむなくこうなっているが、近年のストリート・チューニングカーでもエンジンチューニングの多くはS耐マシンと同じ傾向となっており、エンジン本体をいじる方はそれ程多くない。
吸排気やブーストアップ、コンピュータのみといった方が大多数だ。

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痛車ペイントやフィルムも、モータースポーツですっかり定着した感がある。
レースとはいえ、多くのファン、スポンサー支援で支えられているわけであり、見栄えはとても大事。
デザインセンスがとても重要となってくるし、接戦となるレース中でもそう簡単に剥がれるわけにはいかない。
痛車オーナーの中には、ぜひ真似してみたい、どうやったら綺麗に貼れるか?、簡単剥がれないようにするにはどうすればいいか?といった思いを抱いている方も多いはず。
であれば、S耐マシンの施工担当ショップさんを探して問い合わせてみるのもいいと思う。
J’s Racing

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このホームセンターにもありそうな網目上のラジエターカバー。
ご承知の通り、飛び石やパーツの破片、タイヤカスからラジエターを防御するためのものであるが、こういったものは、今も昔も変わらない。
過去、メーカー名や車種名のペイントを施す遊びをしてるチームもあったが、やはりレースである以上、機能性は大事にしたい。
あまりに網目が細かいと空気の流れを阻害しがちだし、取り付けが甘いと、なんらかの衝撃で外れてラジエターに飛び込んでしまい、冷却系にダメージを負う危険もある。

もちろんこの考えはストリートでも同じ事。
もし付けたいなら、冷却性能を落とさない網目でしっかり取り付けたいところだ。

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最後にタイヤ・ホイールを見ていこう。
ピレリタイヤのワンメイク供給となっているS耐だが、ホイールは各車バラエティに富んだチョイスがなされている。
そして市販車改造クラスである以上、5穴のナットで閉めるホイールが使われている。
タイヤ交換時間を短縮するため、ホイールナットに独特の工夫が施されている点が一般とちょっと違うくらいか。
細かいところでは、鉄製ナットを使っているチームも見受けられた。

ざっと見た感じで、使われているホイールはRAYSTE37系鍛造ホイールが目立つ。
TE37は軽量アルミホイールの中で高い人気を誇っており、ストリートやサーキットタイムアタックでも多くの方が愛用している。
誕生してかなりの年月が経つが、今もS耐の第一線で採用されているところを見ると、その信頼と実績は確かなもののようだ。

【取材 –文 – 写真】
編者(REVOLT-IS

【取材協力 – 問い合わせ先】
スーパー耐久