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群馬大学桐生キャンパスの挑戦 – 学生フォーミュラ2022チームプレイバック

20220922_GUFT_群馬大学_学生フォーミュラ_JSAE

3年ぶりなリアル開催が叶った”学生フォーミュラ”。
物作りを学ぶ学生達の”甲子園”とも言うべき本大会へ各チームどのように臨み、どのような結果が得られたか?
今回は群馬大学桐生キャンパスからエントリーの群馬大学 学生フォーミュラチーム”GUFT”をピックアップしてみた。

GUFTとは”Gunma University Formula Team”の略。
2017年創設の若いチームで、今回で3回目の大会出場となる。
※中止となった2020年、オンラインによる静的審査のみとなった2021年は除く。

メンバーは総勢22名程度。
代表の下に車両製作統括と静的審査統括を1名ずつ配置し、それぞれの下にボディ班、足回り班、パワートレイン班、マネジメント班という専門部署を配したチーム構成で、経験者は学部4年生の3名のみとなっている。

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外観は幅の狭いトレッドが特徴的

こちらがGUFTが製作した学生フォーミュラマシン。
マシンコンセプトは軽トラに乗せられるサイズで、確かに他チームのマシンより一回りコンパクトにした印象を持つ。

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エンジンは、ホンダのバイクCRF450RX用PE07を搭載。
駆動系にはデフロック機構を採用。
デメリットは足回りのジオメトリーや出力調整でカバー出来ると考えられており、それより駆動ロス防止の強みに期待したという。

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リアブレーキは、シャフト中央部にブレーキディスクを一つ配するインボード式。
これによりバネ下重量の軽減が図られている。
一般的に、レイアウトの制約や他部品への熱害で敬遠されがちなインボード式だが、競技車両である事、駆動系をシンプルに出来た事で採用のメリットが生まれたようだ。
マスの集中化による運動性能の向上も期待できるだろう。

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今回から整備性を高める一環で、電装係を集約したボックスを作成。
それをサイドに配置したところマフラーの行き場が無くなってしまい、思案のすえ排気を上へ向けるレイアウトとしている。
ただ、マフラー出口が地上から60cm以内とするレギュレーションがあるため、今のままでは車検に通らない。
そのため、タイコ部から出口をU字に曲げた排気管を作成し、再び地上向けて落としていくよう対策するという。

このレイアウトによるメリットとしては、反響音を少なく出来るため騒音試験で有利である事、熱害で他部品へのダメージを抑えられる事があげられる。
ただ、走り込み不足でまだまだデータ不足。
まだ納得いくレイアウトを見いだせていないという。
今後のデータ取りで大きく変化がする可能性がありそうだ。

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サスペンションはプッシュロッド形式。
ダンパーはRS-Rを装着。
リアに対して、フロント側はアウトボード式ブレーキを採用。
ベルクランクやアップライト、ハブ周りに至るまで綺麗に作りこまれている。

ただ、マシンコンセプトの影響でトレッド幅が制限される点がやっかい。
ストローク長やジオメトリー、ロールセンター位置などを理想的な状態に持っていくのが難しく、試行錯誤が繰り返されている。
それでも、厳しい条件を課す事で多くを学ぶ事が出来たと担当者は語ってくれた。
まだまだ改善の余地がありそうだ。

では大会結果を見てみよう。
事前に行われた書類提出、シェイクダウン証明提出、オンラインによる静的審査、動的審査では以下の結果となった。

ESA/ESO, SES, IAD, ESF, and FMEA:SES ペナルティ-50
デザイン審査:50位
プレゼンテーション審査:4位
コスト&製造審査:32位
シェイクダウン証明:未承認
動的審査:未走行
燃費:未計測

まず静的審査についてだが、デザイン部門とコスト&製造部門は低迷したものの、プレゼン審査では過去最高となる総合4位という結果に。
この事について伺ったところ、どうやら静的審査統括の人を育てる班運営が結果に結びついたようだ。

それは、チーム全体で物事を考えていこうという空気作り。
統括のほうでスケジュールを細かく決めたり、メンバー間でコンペを企画して競わせるなどしながら、メンバー一人一人の自立を促すよう教育してきたという。
そのかいあり後輩達は順調に成長。
プレゼン審査が始まる直前では、統括がいなくても会議が成立までに。
これは社会人、特に組織を束ねる役職につく方にとって理想的なチームと言えるだろう。

反面、SESやデザイン、コスト&製造については反省も多かった様子。
SESでは提出の3か月前まで担当が決まらなかったパートがあり、急ぎ製造したものの試験1回目は不合格でペナルティ対象に。
レギュレーションの解釈誤りもあり、実は確実な方法があったにも関わらず、それに気付けない余裕の無さもあったようだ。

デザインやコスト&製造のほうでは、目の前の製作物に集中するあまり後輩への教育が疎かになり、結局先輩達で巻き取ってしまうケースも多かったという。
それにより、制作面での成長度合いが他チームに比べて乏しいかも?と認識されている。

その他、様々な要因、問題の発生で当初立てた制作スケジュールが次々と遅れ始め、最後まで遅れを取り戻せず、残念ながら動的審査には進めずGUFTの2022年は終了。
多くでノウハウや経験不足が響いた格好となったがそれで悲観せず、今年得た経験を生かそうと、チーム側はさっそく原因の分析と今後の方針について計画を練っているようだ。

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2022年チーム代表の古田氏と静的審査統括の堀田氏
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先輩からのバトンを受け継ぎ、2023年チーム代表となる新井氏

最期に、今回お話しを伺った代表と統括に今後について尋ねてみた。
統括は、自分が離れてもチームが存続していけるよう、来年はいちOBとして後輩達の足りない面をサポートしていきたいとの事。
そして代表は、スケジュール管理をしっかりやる事、自分達でスケジュールを意識し、各々が責任をもって役割を果たせる雰囲気作りをしてほしい、来年こそしっかり走れるマシンを作ってほしいと後輩達にエールを送ってくれた。

果たして来年、動的審査でリベンジを果たす事が出来るか?
プレゼン審査だけでなく、全審査項目に対してどこまで平均値を上げてくるかにも注目したい。

【取材・文】
編者(REVOLT-IS
【取材協力】
群馬大学 学生フォーミュラチーム”GUFT”
自動車技術会