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西日本工業大学おばせキャンパスの挑戦 – 学生フォーミュラ2022チームプレイバック

20220920_NITフォーミュラ_学生フォーミュラ_フォーミュラSAE

3年ぶりなリアル開催が叶った”学生フォーミュラ”。
物作りを学ぶ学生達の”甲子園”とも言うべき本大会へ各チームどのように臨み、どのような結果が得られたか?
今回は西日本工業大学おばせキャンパスからエントリーのNIT Formula Obase Racingをピックアップしていく。

NIT Formula Obase Racingは人数10名、うち6名が製作メンバーという小規模なチーム構成。
チーム自体が2018年以来の参加という事で、全員学生フォーミュラへの参加自体が初めて。
メンバーそれぞれに役割、担当はあるものの、人数が少ないため兼務したり、時にメンバー間で助け合いながらマシン製作に取り組んだという。

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こちらが製作された学生フォーミュラマシン。
ライトフォーミュラを開発コンセプトとしている。

パイプフレームシャシーに載るのは、軽自動車のスズキ・ワゴンR用K6Aエンジン。
実は数年前に積む構想があったもののコロナ過で頓挫。
そのプランを見た現チームが高い関心を持った事で、引き継ぐ形で採用したという。

エンジンや電装系もノーマル。
デフ・ミッションもワゴンR用がそのまま流用されているため、学生フォーミュラでは珍しいHパターンシフトとなる。

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足回りに目を向けてみる。
オーリンズダンパーを配したプッシュロッドサスペンション。
装着されるホイールは14インチで、ダンロップタイヤと組み合わせている。
合わせてブレーキやハブ周りも軽自動車用を流用している。
剛性や効きは申し分ないとの事。

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最期にコックピット周り。
剛性の高そうなステアリングホイールが目に付くが、これは3Dプリンタを使って製作したもの。
重量にして約360gと軽量に仕上がっており、握りやすさにも拘った制作者自慢の一品。
他、Hパターンのシフトリンケージやその可動範囲、ペダルやシート形状、配置に至るまで、ドライバーに合わせるべく工夫されている。

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軽自動車の各ユニットをフォーミュラシャシーに落とし込んだ印象を持つ本マシン。
これによりパワートレインなどをゼロから製作する事が無くなるため、その他にリソースを集約できるメリットが生まれる。
純正品を使う事で一定の信頼性が確保できるため、致命的なトラブルを減らす事にも寄与するだろう。

チーム目標にもよるが、少ないメンバーで動的審査での完走を目指したいなら参考になる開発事例と思える。
例えばシャシー作りにリソースを集中し、翌年はそれをベースにパワートレインやエアロの開発という年単位でステップアップする手法も取れるだろう。

では大会結果を見てみよう。
事前に行われた書類提出、シェイクダウン証明提出、オンラインによる静的審査、動的審査では以下の結果となった。

ESA/ESO, SES, IAD, ESF, and FMEA:ペナルティ無し
デザイン審査:59位
プレゼンテーション審査:50位
コスト&製造審査:57位
シェイクダウン証明:未承認
動的審査:未走行
燃費:未計測
総合:57位

まず静的審査については、全体的に低い結果となった。
これについての感想を伺ったところ、やはりチーム内での経験やノウハウ不足が響いたのでは?との事。
コスト見積もりの甘さや細かな設計仕様を上手く落とし込めなかった点、書類準備が押してしまい余裕がなかった事など自己分析をいくつか上げて頂いた。

動的審査に進むために必要なシェイクダウン証明では、その映像撮影中、クラッチが切れずにエンジンをかけられないトラブルが発生。
奮闘するもののトラブルシューティングが間に合わずに時間切れ。
シェイクダウン証明提出を断念したという。

持ち帰って改めて調査したところ、なんとクラッチにベアリングが装着されていない事が発覚。
ベアリングを装着したところ、何事もなくエンジンがかかった。。。

この時は、各部品の製造がシェイクダウン証明の提出期限ぎりぎりとなってしまい、間に合わせようようと急ぎ組み立てた際に確認し切れなかったようだ。

その後、なんとかフォローアップ走行に参加出来ればと模擬車検に向けたマシン準備に急ピッチで取り組むも、全体の遅れを取り戻す事ができず車検参加は見送り。
動的審査に進む事が叶わなかった。

チームも認識する通り、経験やノウハウ不足による暗中模索の多かった事が、今回の結果に至ったように感じられる。
ただ、2018年以来の参加では先輩からの活動継承は困難であり、初参加メンバーのみでは致し方なかった面もあるだろう。

しかし今回のミス、失敗で基準となる多くのノウハウを得たのは収穫。
来年は今年のコンセプトにさらに磨きをかけつつ、スケジュールに余裕が持てるよう段取りを組んだり、組付けミスを減らす調整、工夫も考えているという。
その成果が試される2023年。
果たしてどのようなチーム、どのようなマシンでエコパに登場するだろう?

【取材・文】
編者(REVOLT-IS
【取材協力】
NIT Formula Obase Racing
自動車技術会