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インターコンチネンタルドリフティングカップ – 追走決勝

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インターコンチネンタルドリフティングカップ 2017取材記事。
今回は追走決勝とその後の模様をお送りする。

単走決勝の結果だけ見れば川畑真人選手、斉藤太吾選手両名の抜きんでた争いになるかと思われたが、海外勢も慣れてきたか食い下がってくる場面もあり、非常に見応えある追走トーナメントとなった。
初日LEG1の模様をお伝えする。

D1GPフォーミュラドリフトジャパンでも上位ランカーに名を連ねる横井昌志藤野秀之の両選手。
共に単走では一歩遅れを取ったものの、この追走トーナメントではさすがの走りで順当に勝ち上がってきた。
この時点で両名は、2017年のD1GPシリーズチャンピオン獲得権利を持っていた。
ここで世界選手権総合優勝を勝ち取り、さらに拍をつけたかった事であろう。

そのまま優勝争いに絡んでくるかに思われたが、そこへロシア勢の二人、日産・スカイラインのアルカディ・サレグラセブ(Arkady Tsaregratsev)選手、日産・シルビアのジョージ・チヴシャン(Georgy Chivchyan)選手と、日産・180SXを駆る香港のチャールズ・ウン(Charles NG)選手が立ちふさがり敗退。
それぞれ6位、7位となった。
2日目LEG2との総合でも、横井選手は世界ランク4位、藤野選手は世界ランク6位。
非常に惜しい結果となった。

ちなみに横井選手は翌日のLEG2単走優勝、2017年D1GP最終戦エキシビジョンビジョンマッチで総合優勝を果たし、藤野選手は2017年D1GPシリーズチャンピオンを獲得している。

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日本では馴染みの薄い外車も多く参戦するFIAインターコンチネンタルドリフティングカップ
だが追走トーナメントが進むにつれ、日本車ばかりが勝ちがってきた点が興味深い。
やはりドリフト発祥が日本という点からも、日本車のほうがセッティングノウハウについて一律の長があるのかもしれない。

また海外チームの中には、日本側にマシンの提供やチーム運営を依頼しているところもあったが、その効果も少なからずあったようだ。

結果LEG1では、追走決勝トップテンに全て日本車がランク入りし、外車勢最上位は、リトアニアのアウリマス・バッキーズ(Aurimas Bakchis)選手が駆るヒュンダイ・ジェネシスの11位となった。

翌日LEG2との総合でも上位8台が全て日本車となっており、今後の世界戦継続においては、外車を要するチームのさらなる頑張りが期待される。

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本大会、追走トーナメント中で一番気になったのが、審査結果が決まるまでの時間の長さ。

それだけ拮抗した戦いが繰り広げられた結果であろうが、とにかく次の走行開始までにかかる時間が長すぎた。
せっかくの盛り上がりも、長いインターバルでは観客も冷めてしまう。

D1GPのように軽妙な実況や解説で場を繋げられれば良かったのだが、それも無し。
これは今後の課題とすべきだろう。

今回のFIAインターコンチネンタルドリフティングカップは、機械審査と各国のドリフト大会から選抜された審査員による審査が行われたが、やはり初めての試みにありがちな混乱があったようだ。

ドリフト大会による審査基準の違い、マシン作りの違い、ドライバーの走らせ方の違い、審査員そのものの見方の違い。
これらは当然わかっていた事であり、統一大会をする上でどのように擦り合わせてきたか注目していたのだが、まだまだ不十分だったように思える。
実際やってみないとわからない事が多かったようで、現地では関係者の苦労が垣間見れた。

個人的には、フィギュアスケートや体操競技のようなテンポのよい判定がなされていく事を強く望みたいところ。

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今回、優勝争いに食い込み場内を沸かしたロシア勢の2台。

特に日産・スカイラインのアルカディ・サレグラセブ(Arkady Tsaregratsev)選手は、LEG1で追走3位、2日目LEG2では追走優勝を果たし、日産・GT-Rの斉藤選手より上の世界ランク2位の座をゲットした。
また日産・シルビアのジョージ・チヴシャン(Georgy Chivchyan)選手も、横井選手や斉藤選手とも堂々と渡り合い、世界ランク5位を得た。

日本のレベルをよく知る両選手ではあったが、D1GPのロシア戦も開催されるようになった事で、ロシア本国でのプロドリフトのレベルがあがりつつあるようだ。
次回の世界戦でも、確実に優勝争いに食い込んでくるはず。
日本側もウカウカしてはいられない。

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様々なドラマ、戦いはあったものの、やはりこの2台が勝ち残った。

結果だけ見れば、追走ではTOYO TIRES GLION TRUST RACINGの日産・GT-Rを駆る川畑真人選手がLEG1で追走優勝、LEG2で2位に入り追走世界王者へ。
単走ではWANLI Fat Five Racingの日産・GT-Rを駆る斉藤太吾選手がLEG1で総合優勝、LEG2では5位となり、単走世界王者となった。

世界王者を分け合う形となった両選手。
今のドリフト界を代表する選手が世界王者となった事は大変喜ばしい事だが、決勝前、周囲からかかるプレッシャーは相当のものだったに違いない。
特に世界大会での初代王者は記念すべきもの。
永遠に語り継がれる栄誉そのもだ。
選手やチームは言うに及ばず、サポートするメーカー、スポンサーも喉から手が出るほど欲しかったはず。

そんな状況下でも、両名はD1GPなみのケンカバトルを繰り広げてくれた。
接触こそあったものの、それもドリフト。
極限ギリギリの戦いでは、ちょっとの油断が命取りとなる。
そして、ドリフトファンはそんな戦いを望んでいるのだ。

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全力を出し切って晴れやかな顔の両名。
走行後、お互いの健闘を称え合った。

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いよいよ表彰式。
プレゼンターのFIA会長ジャン・トッドが選手を讃えてくれた。

LEG1単走決勝の上位3名。

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LEG1追走決勝の上位3名。

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そしてシャンパンファイトへ。
大会初日が無事に閉幕した。

選手もそうだが関係者も初めて尽くしの事ばかりで、この時ばかりは嬉しさもあればホッとした部分もあったに違いない。

翌日に開催されたLEG2でも白熱した戦いが繰り広げられ、見事 川畑選手が世界界王者を獲得したのは既報の通りだ。

以下、LEG1での優勝記者会見時のスナップと簡単なコメントを掲載してみる。

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川畑真人選手
「単走では99点台を出せたが、斉藤選手に比べれば攻めきれておらず、それで100点台には届かった」
「追走では、負けない走りに切り替えた」
「斉藤選手との接触後のサドンデスでは、とにかく集中力を切らさないように意識した」

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斉藤太吾選手
「川畑選手に先行された単走1本目での反省を生かしてより攻めていった結果、100点台を出せた」
「追走では順調だったものの、川畑選手との決勝ではシフトミスによる追突もあり、そのせいでサドンデスに突入してしまい、申し訳なさも重なり攻めきれなかった」

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チャールズ・ウン(Charles NG)選手
「時間がなく練習走行が満足に出来なかった」
「タイから持ってきた車がお台場の路面と合わない事がわかり、チームで時間をかけてセッティング変更を行った。チームのおかげで翌日のマシンバランスが良くなり、単走で良い走りが出来るようになった」

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アルカディ・サレグラセブ(Arkady Tsaregratsev)選手
「マシンが川畑選手が駆る日産・GT-Rほどの速さがなく、ついていく事が困難だった。そもそも地元ロシアには、川畑選手や斉藤選手が駆るマシンようなレベルの車が存在しない」
「次回までに、よりハイレベルなマシンを作って挑みたい」

どの選手も、初のドリフト世界大会に臨む喜びと難しさ、競技中の様子、それぞれの思いを語り、記者会見も終了した。

残念ながらLEG2へは足を運びことが叶わなかったが、取材を通して各国のドリフト模様、初大会開催の難しさ、世界戦の雰囲気を肌身に感じる事ができ、とても貴重な体験をさせて頂いた。

そんな光栄な場に携わらせて頂き大変恐縮なのだが、編者が気になった点をいくつかまとめてみた。
今後の大会レベルアップの参考意見として読んでもらえたら幸いである。

1.各選手の事がわかりにくい。D1GPのコアファン向けだとしても、もう少し選手に感情移入しやすくなるような詳しい情報を、早い段階で配信してもよかったのでは?
2.もっと各国のチャンピオン経験を持つトップドリフターを呼んでほしい。例えばフォーミュラドリフトでチャンピオン争いをする選手など。
日本のドリフトファンに馴染みのマッドマイク選手やヴァンギットン選手もぜひ呼んでほしいところ。
3.大会PRを早い段階でもっと大きく行ってほしい。一般の車好きの中には、D1GPが開催されていると誤解している方もいたほど。
4.先にも書いたが審査時間が長すぎる。

また大会の雰囲気や観客について、記者会見中の川畑選手の以下のコメントが全てを物語っているように感じた。
「やはり日本人はおとなしい。もっと海外のような盛り上がりが欲しかった。今後に期待したい」

これは編者も特に感じた。
しかしLEG1の様子を見る限り、何も知らない観客に熱い応援を強いるのはちょっと酷かと。
先にも書いたが、D1GPのように熱い応援がしやすい雰囲気作りも必要ではないか?とも思った。

日本各地で開催されているドリフトイベントや走行会ではとても熱い応援が繰り広げられており、ドライバーはその応援を受け、さらに刺激的なドリフトを展開してくれている。
ドリフトが人気なのも、そういった熱い応援と走りの連鎖がとても高いレベルにあるからだ。

FIA格式、JAF公認になり色々難しい面もあるだろうが、そういった盛り上がりを作る要素を少しでも取り入れて頂けたら、来年以降、さらに観客も盛り上がるのではないだろうか?
今後のFIAインターコンチネンタルドリフティングカップのさらなる発展を願いたい。

【取材 – 文 – 写真】
編者(REVOLT-IS

【取材協力 – 問い合わせ】
FIAインターコンチネンタルドリフティングカップ(FIA Intercontinental Drifting Cup)事務局