学生の手作りレーシングカー が新天地で対決 – 学生フォーミュラ2024 レポート1
学生の手作りレーシングカー が競い合う学生フォーミュラ。
その第22回大会が、場所を Aichi Sky Expo (愛知県国際展示場)に移して開催された。
今年も ICV (ガソリンエンジン)クラスと EV クラスで75チームが参加。
うち9チームが海外からの参加で、事前申込の段階ではさらに31チームからの申し込みがあったという。
昨年出場出来なかった国内数チームの顔ぶれも加わっており、コロナ過前の隆盛復活を感じさせた。
既報の通り、総合優勝は ICV クラスの Grandelfino (京都工芸繊維大学)で、見事3連覇を達成。
2位は EV クラスの Formula Team FEM (名古屋大学)、3位は ICV クラスのFORTEK (神戸大学)。
昨年とは走行路面や気温、湿度が変わっており、現地での事前テストの機会が得られず、どのチームもぶっつけ本番となった本大会。
これまで以上にチーム力、現場対応力が問われる事となったが、結果を見返すと、その事が色濃く出ていた。
総合力で勝ち取った3連覇 – Grandelfino (京都工芸繊維大学)
このチーム最大のトピックスと言えば、車体をカーボンモノコックに変更した事だろう。
合わせて足回りや空力のアップデート、電子シフターの採用など多くの変更が施されたが、そんなマシンをデータにない路面にいかにアジャストしてくるかが注目された。
各部門を席巻した2022年から見れば、静的審査でのコスト、デザイン、プレゼンテーションの5位、動的審査でのアクセラレーション6位、スキッドパッド6位は一見劣るように感じられるが、他チームと比べてどの部門も必ず優勝圏内つけており、オートクロスでは2位を2秒近く引き離すタイムで1位を獲得。
最後のエンデュランスでは3位と、全部門、安定したスコアを叩き出しての総合優勝となった。
製品力では群を抜くEVマシン – Formula Team FEM (名古屋大学)
EVクラスでは文句なく1位の同チーム。
2019年から他にはない4輪インホイールモーターのマシン開発をスタートさせ、コロナ過でも開発を継続。
さらにカーボンモノコックやRRレイアウトの採用など、企業が見ても魅力に感じるマシンに仕上げてきた。
果たしてその結果だが、静的審査ではコストが9位と振るわなかったものの、デザインでは国内勢に大きく差をつけての3位、プレゼンテーションでは1位を獲得した。
静的審査の総合順位も1位で、前評判通り審査員から高い評価を得ていた。
そして動的審査では、もはや独壇場となったアクセラレーションにおいては文句なく1位。
昨年、同チームが叩き出したコースレコード”3.649”には及ばなかったものの”3.779”を記録して他を圧倒した。
しかし車検通過に時間がかかった事でスキッドパッドは走れず、オートクロスでは順調にタイムをあげていたものの、こちらも最後のセッションが時間切れで走れないという不運に見舞われ8位。
エンデュランスも8位で無事完走したが、これらの結果が響き、残念ながらEVクラス初の総合優勝には届かなかった。
コストパフォーマンスに優れたマシン – FORTEK (神戸大学)
静的審査のみとなった2021年大会で総合優勝を果たした同チーム。
2022年は大きく順位を落としたものの、2023年は総合6位、そして今年は3位と往年の強さを取り戻しつつある。
マシンは大幅な軽量化とエンジンのトルク特性変更が目を引くが、それ以外で大きなトピックスは見られない。
注目は静的審査で、デザインが14位、プレゼンテーションは10位となったが、コストにおいては総合順位トップ3の中で一番高いスコアとなっている。
総合3位の決め手となった動的審査では、アクセラレーションにおいては総合優勝の京都工芸繊維大学を上回る3位を記録。
スキッドパッドは22位と落としたものの、オートクロスでは12位、エンデュランスでは4位という結果に。
コストとマシン性能とのバランス、販売を前提とする製品開発の観点で見るなら、このマシンが1位に選ばれるだろう。
【取材・文】
編者(REVOLT-IS)
【取材協力】
公益社団法人 自動車技術会