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2023年のデザイン審査傾向 ~ 学生フォーミュラ

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コロナ過で3年ぶりに開催された2022年大会から1年。
2023年の学生フォーミュラ日本大会は、途切れつつあったノウハウの再構築が進んだ事もあり、いくつかのチームで躍進ぶりが見られた。
そんな各チームの近年の傾向を探るべく、今回、静的のデザイン審査を担当した方々に取材を敢行した。
昔と今の違い、現在の学生フォーミュラを知る一つの資料として読み進めて頂きたい。

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今年は2022年での実績、課題をベースに正常進化させてきたチームが目立っており、より多くの課題点を見つけて改善を試みるチームや、アクセラレーションやスキッドパッドの基本に立ち返り、Vプロセスを回す、計測までしっかりやるところが増えてきた。
他にも、新たな解析ソフトの導入や解析方法自体の検証を行うチームや、チームマネジメント、教育に言及するチームも増えてきたという。

これには、コロナ過であった活動制限が撤廃された事が大きいようで、その恩恵を生かせたのだろう。

試走においても去年より課題点を洗い出したチームが多かったようで、デザインブリーフィングより本審査でより詳しい内容を聞くことが出来た事からも、その傾向が感じ取れた。

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一方、まだまだチームマネジメントやマシン製作に苦労するチームも多い様子。
例えば、これまでに蓄積したデータのみでマシンを製作してしまっている点。
そのデータがどういう目的で、何に対して、どのような効果があるのか、どうすれば上手く作れるのか、等が理解出来ていないからでは?と見られている。
経験が少ない、どこから手を付けていいかわからないと暗中模索している可能性もあるので、もしそんな傾向が見られたなら、チームのOB、OGが後輩のためにひと肌脱いでもらえたらと思う。

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EVクラスへ参戦するチームも増えてきた。
今年は新たに4チームがエントリー。
内、フォローアップ走行含め3チームが出走を果たしている。

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EVと言えば車検突破の難しさが上げられるが、今年移行した東京大学名古屋工業大学のように複数年計画でじっくり準備する事で、総合優勝を狙えるマシンが作れるようになってきている。
驚異的な速さを見せつけた名古屋大学が良い例だろう。
課題だった車重も年々軽くなってきており、ICV勢もウカウカ出来ない状況となっている。

来年、日本自動車大学校(NATS)富山大学トヨタ名古屋自動車大学校といったチームがEV移行を表面しており、このクラスへの参加は増加傾向にある。
ICVで初めて参戦したときと同様に一からのチャレンジとなるが、どのようなアプローチを見せてくれるか期待したい。

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先の内容をふまえ、独自性を感じたチームと注目した技術をあげてもらった。

名古屋大学

  • 4輪インホイールモーター
  • トラクションコントロール
  • ステップドピニオン式遊星歯車機構の減速機
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京都大学

  • シームレストランスミッション
  • 電子制御スロットル
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近畿大学

  • FRのサイドエンジンレイアウト

まずは名古屋大学。
熟成なった唯一無二の4輪インホールモーターに加え、上述の2ユニットの搭載でアクセラレーションでは日本新記録を叩きだしており、その後の減速も他のEVマシンとは違うと注目を集めていた。

次は京都大学。
各ユニットとも市販車開発で関心が高いだけに注目を集めていたが、本番では残念ながらトラブルで後退。
しかしトラブルシューティングして再出走を果たした事から、それも、各ユニットをしっかり理解出来ているからだと高い評価を受けている。

最期は近畿大学。
多くが一般的なリアエンジンのミッドシップレイアウトを採用する中、コクピット横にエンジンを搭載するFRレイアウトを採用。
デザイン審査は22位ながら1年でよくこのレイアウトを作りあげたと、一部審査員の間では評価が高かったようだ。

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最期に、取材した審査員の方々からいくつかアドバイスを寄せてもらった。

まずはICV、EVどちらのクラスに参加されるにしても、マシンの形を作り上げて下さい!
これは、活動に対する直接的なモチベーションに関わってきます。
自分達が作りたいマシンを、まずは走る前の状態まで作り上げる。
実際に走行させてみて、自分たちの成果を目に見える状態にするのです。
そうすれば、あとは良い点、悪い点を列挙し、良い点は伸ばせるように、悪い点は改善できるように設計をしていくのがいいと思います。

初めは100点満点のマシンは作れません。
自分も現役の時はそうでしたし、今年大会で好成績を取ったチームでも100点満点ではないでしょう。
まずはマシンを作り上げる!そして走行させる!
これが初参加チームのゴールにして、次ステップのスタートラインです。
新しいチームがセントレアの会場を走っているのを期待しています!

まずはチームとしての目標をしっかり定めて、それに対して、何が必要で何が不要なのかを見極めてプロジェクトをマネジメントしてほしいなと思います。

事前提出資料ですが、デザイン審査に限ってはどう考えたか、設計案やアイディアに対してどのように比較検討したかがわかるように書いてほしいと思っています。
レベルの高い事のみ点数がつくわけではありません。

本番の審査では、提出資料の内容をなぞるような報告はせず、提出後にどんな試験をして、どんな考察をして、どんなアップデートをして来たのかも語ってほしいですね。

独自技術を開発していたチームが、それを段々ものにしてきたように思います。
まだまだ例は少ないですが、独自の機構や考えを編み出したなら、それをデザインブリーフィングや審査でどんどん発言してほしいですね。

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来年の第22回大会は、場所を愛知国際展示場(Aichi Sky Expo)へ移して行われる。
2006年から積み上げてきた走行データは全てリセット。
また一からのスタートとなる。
経験がものをいう学生フォーミュラだが、初めての会場に向けて各チームどのようなアプローチを見出すか?
今回の記事もぜひ参考にして頂きたい。

【取材・文】
編者(REVOLT-IS
【取材協力】
学生フォーミュラ2023のデザイン審査員様
公益社団法人 自動車技術会