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学生フォーミュラ2023は8月21日~25日にオンライン、8月28日~9月2日にエコパで開催

20230723_学生フォーミュラ2023の開催概要

今年も静岡県庁内に設けられた記者会見の場で、物作りを学ぶ学生達の祭典「学生フォーミュラ」の開催が高らかに宣言された。

本大会は、学生達が自分達の手でゼロからレーシングカーを製作。
チームを一つの企業に、レーシングカーを自社が開発した製品に見立てて行うデザイン、コスト、プレゼンテーションの3つの種目(静的審査)と、それを走らせてアクセラレーション、スキッドパッド、オートクロス、エンデュランス、エンデュランス後のエネルギー消費を見るエフィシエンシーという5つの種目(動的審査)を競う。

モータースポーツとしての側面だけでなく、物作り技術をはじめ、社会で必要とされるスキルを実地で学べる場として、また学生フォーミュラ出身者の人材が様々な分野で活躍している事からも、人材不足に悩む多くの企業から注目を集めている。

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会場には、SUMとSFPの手による今年のマシンが展示された。
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大会実行委員長の大和田 優氏から、今年の概要説明が行われた。

発表された大会概要を見てみよう。
まず日程と会場は以下の通りとなる。

静的審査(オンライン):2023年8月21日(月)から8月25日(金)※非公開
車検/動的審査(現地開催):2023年8月28日(月)から9月2日(土)※8月30日までは車検のみが行われる。
現地開催時の会場:静岡県袋井市・小笠山総合運動公園エコパ

次に参加チームだが、昨年は国内のみで69のエントリーだったが、今年はコロナ明けで海外チームのエントリーを受け入れた事もあり90に増加。
従来の国際大会としての形式を取り戻しつつあるようだ。

参加車両はICV(ガソリンエンジン)クラスとEVクラスで別れているが、今年はEVチームのエントリーが増加しているのも注目。
それを考慮してか、今年はEVのみ車検期間が3日間に設定された(ICVは2日間)。

ただ昨年は、3年ぶりの現地開催で多くのチームが経験不足を露呈。
特にICVに比べて項目数の多いEV車検では、EVチームの多くが車検落ちとなっている。
多くのEVチームでは、二の轍を踏むまいと万全の準備に動いているが、この期間延長が果たしてどう転ぶか?

次は現地開催について。
昨年はコロナ過だったため一般来場者の入場は制限されたが、明けた事で今年は制限が撤廃。
コースサイドの一部を除き、ピットエリア含めて自由に入れるようになった。
走行だけでなく、学生達自慢のマシンをぜひ間近で見て頂きたい。
尚、来場可能となるのは29日(火)の11時からとなる。
駐車場や会場へのアクセスについては、エコパの公式サイトを参照の事。

最期に、記者会見にリアル参加、オンライン参加したチームを紹介する。

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静岡理工科大学SFPチームのメンバー

SFP(静岡理工科大学 Formula Project)

昨年荒れたEVクラスの中、このチームも基盤のトラブルもよりフルパワーで走れない問題を抱えていたが、チーム力で上手くまとめあげて見事クラス優勝を果たした。

今年はEVチームの増加、特に海外からの参加が復活した事で、クラス連覇に向けて良い意味で緊張感を持っている様子。
さらに静的審査での順位をあげる事で、チーム歴代最高順位である8位を超える事を目標に設定。
マシンのパフォーマンス向上だけでなく、昨年の他チームの資料分析を行いつつ、自チーム資料のブラッシュにも力を注いでいる。

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SFPチームリーダーの今場さん

現在も12名という少数精鋭で作業を進めているが、昨年の課題や起きたトラブルは解消済み。
シェイクダウンも完了たとの事で、ドライバーの習熟やマシンセッティングに時間をかけているという。

目標に向けて着実に歩みを進めているようだ。

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静岡大学SUMのメンバー

SUM(静岡大学 Motors)

昨年はEVクラスへ転向して初参戦だったものの、残念ながら車検を通過できず涙を飲んだSUM。
しかしマシン自体に大きな問題はなく走行を行えた事から、そこを基準に今年は基本性能の向上とデータの取得、ノウハウの構築という目的の元、オートクロス58秒台、静的審査1桁順位を目標に掲げている。

58秒台と言えば昨年2位のタイム。
総合2位の京都大学でも62秒台なだけに、マシンの仕上がりにかなり自信がある様子。
リーダーも100点を付けている。
こちらもシェイクダウンまで順調に済ませており、大会までマシンの熟成に努めていくようだ。

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SUMチームリーダーの山本さん

ところで、このチームはユニークなブログを書く事でも知られており、そこからはチームワークや雰囲気の良さが読み取れる。

新しく1年生が加わり、総勢70名の大所帯となった今年のチームに対して、リーダーからはメリハリの良さを特徴にあげている。
やる時と休む時、楽しむ時も中途半端にせず、皆でしっかり切り替えている事が、チーム全体の雰囲気向上に繋がっているのでは?と話してくれた。

マシンだけでなく、チーム力の高さを感じたSUM。
果たして、今年の大会ではどのような結果を出してくるだろう?

SAT’S(静岡工科自動車大学校 Technology Sports Formula Team)

コロナ過での開催となった昨年はメンバー不足により出場を辞退。
心機一転、今年は昨今のEV隆盛と活動10年目という節目を踏まえ、2021年までのICVからEVにコンバートしてのエントリーとなる。

経験のないEV開発とあってか、チームでは3カ年目標を立てている。
車検合格と動的審査への出走。
翌年は動的審査完走。
その翌年はEVクラス上位入賞という内容だ。

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SAT’Sチームの岩間さん

そのうえで今年は土台となる基礎、基本を固めていく年となるが、マシン開発は安全性の確保や整備性の良さ、エネルギーマネジメントの確立に人間工学に基づいたフレーム設計、操作性の追求を重視。
可能な限り、翌年に向けたデータを持ち帰る事を考えているようだ。

学校の特性上、自動車整備の授業が多いのもありEV開発は苦戦が続いているが、それでもメンバーと協力しながら、課題を少しづつクリアしているという。

残念ながらマシンのシェイクダウンは済んでおらず、会見場にはマシンも持ち込まれなかった。
昨年のEV勢の苦境から難航が予想されるが、チームの奮闘を祈りたいと思う。

Grandelfino(京都工芸繊維大学)

昨年、総合優勝を果たした同チームの目標はもちろん大会連覇。
今年は海外からの参戦増もあり、連覇達成に向けて何をすればいいか分析を進めたところ、オートクロスとエンデュランスでの満点獲得が命題にあがったという。
そこで今年のマシンコンセプトとして、低速コーナーでの旋回性能向上が掲げられた。

さらなる重心位置の低下と重量の削減、ダウンフォースの増加と低回転域でのフラットトルクを目指して開発されたマシンは、全国に先駆けて4月にいち早くシェイクダウンを達成。
試走会や風洞実験にも積極的に参加する事で、マシンのデータ収集とマイレージを着実に伸ばしている。

やはり今年も、その強さを見せつけてくれそうだ。

TUF(富山大学 Formula Project)

昨年は、それまでの二桁順位から総合6位と大きく飛躍を遂げたチーム。
今年の大会目標として総合10位以内と、エンデュランス1313秒と具体的なターゲットタイムを掲げている。

マシンコンセプトは昨年のマシン「飛燕」の正常進化。
新たに「飛燕改」と名付けられた今年のマシンは、昨年のネガティブな点を改善して総合性能の引き上げを狙っている。
主だったところではエアロデバイスの改良とエンジン重心の低減、リアフレーム構造の見直し、冷却性能の改善、前後サスジオメトリーの調整機構とパドルシフトの搭載がある。
これによりスラロームと高速コーナーでの進入、定常、脱出速度の向上を図ってきたようだが、既にシェイクダウンは済ませており、こちらも順調にテストメニューを消化中のようだ。

ところで目標を見ておやっ?と思った事がある。
順位は一見控えめながら、エンデュランスは昨年だと2位が狙えるタイムをターゲットに設定している。
実は、昨年より上の総合順位を視野に入れているのでは?

NEXT.Formula Project(新潟大学)

毎年、着実に総合順位を上げてきているチーム。
今年は昨年のマシンをベースに、操作性の向上とさらなる軽量化を目指し、各部にも細かな改良を施しながら開発された。
大きなトピックとしては、オイルパンの改造してのエンジン重心位置の低下と、リアフレーム最適化による軽量化と整備性の向上、全体的な操作性の向上、そしてエアロ開発によるさらなるダウンフォース獲得が上げられる。

今現在、今年初のエンジン始動の発表はあったものの、公開されている情報を見る限り、マシンはまだ製作中のようでシェイクダウンには至っていない様子。
果たして大会でその姿を見る事ができるか?
チームの奮闘に期待したい。

UTFF(東京大学フォーミュラファクトリー)

これまで、東京大学にはICVとEVの2つのチームが存在していたが、今年は両チームが合流。
新たにEVチームとして再スタートを切る事となった。

昨年はICVチームが総合23位と大健闘しているが、2021年発足のEVチームは大会出場経験が無し。
約1年の研究開発はあるがまだまだノウハウ不足なEVだけに、今年の目標として動的審査出場と全種目の完走を掲げている。

チームとしては3カ年計画を立てており、初年度となる今年はリアのみ2つのインホイールモーターを採用。
まずはしっかり走らせる土台を開発し、完走を目指す事で次年度に向けた貴重なデータを持ち帰ろうと考えているようだ。
そうして翌年は技術的ノウハウのさらなる蓄積とアクセラのタイム向上、さらにその翌年には4輪全てにインホイールモーターの採用と総合優勝を狙える位置にいるよう、活動を続けていくという。

先日シェイクダウンの現場に立ち会う事が出来たが、見た感じではまだ生まれたばかりでこれからという印象。
ただチームとしては、これまで既製品を買って組み合わせたマシン作りに片寄っていたが、今年は徐々にパーツの内製化に努めており、メンバーは自信を深めている。
こうしたマシン各部にもぜひ注目して欲しいと語ってくれた。

FEM(名古屋大学 Formula Entertainment Machine)

4輪インホイールモーターの採用やEVクラス4連覇、学生フォーミュラEVでの世界ランキング2位など、EVクラスの中でも際立った実力を持っている。
昨年はカーボンモノコックの採用など意欲的な開発がなされたが、多くのチームがはまった車検において最期の最後で問題が発生。
動的審査に進む事ができず涙を飲んでいる。

それだけに今年にかける意気込みは並々ならぬものがあるようで、クラス一位の奪還とEVによる総合優勝を目指すべく、昨年の早い段階からニューマシンの開発に着手。
これまでのEVシステムにさらに磨きをかけつつ、トラクションコントロールの採用や、クラウドファンディングからの支援金で、新たな動力バッテリーの購入にも踏み切っている。

やはり今年も、優勝候補の一翼を担ってくれそうだ。

【取材/文】
編者(REVOLT-IS
【取材協力】
公益社団法人自動車技術会
SFP(静岡理工科大学 Formula Project)
SUM(静岡大学 Motors)
SAT’S(静岡工科自動車大学校 Technology Sports Formula Team)