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帝京大学 が見せる3年連続完走の理由 – 学生フォーミュラ2024レポート

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帝京大学 宇都宮キャンパス を去年に学生フォーミュラに参加する 帝京フォーミュラプロジェクト (以下、 TFP と呼称)。

昨年は総合18位へと昇りつめた同チーム。
今年度はさらなるステップアップも期待されたが、リソース不足など様々な要因が重なりマシンの制作スケジュールが大幅に遅延。
なんとか1度だけテスト走行に参加できたものの、静的審査が始まる直前にシェイクダウンを済ますという綱渡り状態で大会を迎える事となった。

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カウル裏にはこんなメッセージが
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昨年とは違った印象のスポーティーなカラーリングが施された今季のマシン「TFP-24」は、旋回性とエンジン出力の向上を目指して開発されている。

まず目を引くのが全高の低さ。
昨年型よりなんと200mm近く低くめられており、これによる低重心化の恩恵がどの程度か気になるところ。

足回りは今回もフロントはプルロッド、リアをプッシュロッド形式としているが、形状、レイアウトが大きく変更されている。
アーム取付位置も変更できるようになっていたが、これはデータのない愛知スカイエキスポに向けた設計だろう。
未経験のコースも、セッティングの幅を広げる事で柔軟に対応したいという意図が感じられた。

エンジン面では若干の出力向上を果たしているが、車重は昨年より重くなっており、そのためパワーウエイトレシオが悪くなっている。
燃料タンク容量も3リッター近く増えているが、これは未知のコースで確実な完走を狙っての変更かもしれない。

では、今年のTFPを振り返ってみよう。

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静的審査(※カッコは2023年の順位)

  • プレゼンテーション:45位(40位)
  • デザイン:56位(33位)
  • コスト:67位(58位)

静的総合:63位(46位)

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動的審査(※カッコは2023年の順位)

  • アクセラレーション:24位(16位)
  • スキッドパッド:36位(6位)
  • オートクロス:35位(11位)
  • エンデュランス:28位(17位)
  • 効率:30位(23位)

動的総合:33位(15位)

総合:36位(18位)

今年は残念ながら、全体的に大きく順位を落とす結果に。
開発スケジュールの大幅遅延が最後まで響いてしまい、全ての審査項目において準備不足なまま臨まざるえなかったという。

静的審査はどの項目も厳しい指摘を受けており、動的審査ではセッティングデータを十分取れなかった事も痛手となり、完走こそしたものの昨年よりタイムを落としていた。
中でもスキッドパッドとオートクロスは2回しか走れず、ドライバーはステアリング操作がきついマシンと格闘する事になり、かなり負担をかけていたそうだ。

一見、厳しい見方しか出来ないチームに思えるが、実は個人的に、今年の TFP を高く評価している。
それは今年も動的審査に進出し、エンデュランスまでしっかり完走を果たしている点で、 TFP と同程度、もしくはより充実したリソースや経験、実績を持つチームが動的審査に進出できず、完走を果たせない中、毎年、最後まで走れるマシンを作りあげている。

学生フォーミュラに参加するチームは各々が抱える事情、環境の中で活動しており、さらに毎年人や環境、予算なども変わるため、例えば引継ぎや後輩への教育一つ疎かにしてしまうと、トップチームでさえも成績を大きく落とす可能性がある。
学生フォーミュラに関わる審査員からは「とにかく形にし、最後まで走りきれるマシンを作って欲しい。まずはそれからです」という声もあがるほどで、学生フォーミュラでの完走の難しさが窺える。

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コロナ過明けの2022年から3年連続の完走を果たした TFP 。
過去2年主力だったメンバーがごっそり抜けてしまい、人的リソースの不足や教育、経験の継承などで色々問題が発生してしまい暗中模索、試行錯誤しながらの1年だったという。
それでも完走という目標を達成できたのは、2022年から作りあげてきたチーム力と目標達成へのメンバーの意識統一、少ないリソースをマシン制作へ”極振り”した事が考えられる。

これは社会でもよくある事で、少ない人数で何かを成す際、全てをやろうとすると中途半端になり、目的を達成できず破綻する可能性が高い。
それなら最優先目標を決め、それを達成するには何をすればいいか?では何を捨てればいいか?を見極め、やるべき事のみにリソースを集中すれば成功の可能性が高くなる。

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もちろん、 TFP のチームワークや個々のメンバーのやる気や根性も、目標達成の重要なファクターだったのは言うまでもない。
動的審査を担当したドライバーも、絶対にゴールまでマシンを送り届けようと懸命なドライビングでチームに応えており、それが走りにしっかり表れていた。

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そういえば大会終了後に帰宅の途についていたところ、偶然にも TFP の1年生メンバーと話す機会があった。
初めての大会参加はカルチャーショックと大きな刺激を受けたようで「本当に凄かったです!」、「先輩方がカッコ良かった!」、「今年はあれが出来なくて残念でした!」、「来年はあれもしたいし、これもやってみたいです!」などと、皆が高揚した表情で話してくれた。

早くもやる気がみなぎっているようだ。

【取材・文】
編者(REVOLT-IS
【取材協力】
公益社団法人 自動車技術会
帝京フォーミュラプロジェクト