学生フォーミュラ 日本大会 2024 公開記者発表レポート
学生フォーミュラ は、ものづくり技術者をはじめとした次世代を担う人材育成を目的に、全国の大学生、専門学校生が自分たちで作ったレーシングカーで覇を競い合う大会で、毎年熱い戦いが繰り広げられてる。
第22回となる今年は、慣れ親しんだエコパから Aichi Sky Expo (愛知県国際展示場)特設会場へ移して行われる事になるが、今回そのPRと公開記者発表が、同じく Aichi Sky Expo で開催されていた人とくるまのテクノロジー展 2024 NAGOYA にて開かれた。
展示会真っ只中で開かれたこともあり、多くのギャラリーに恵まれた今回の公開記者発表。
まずは学生フォーミュラの歴史、概要、趣旨説明から進められ、その後は今年の大会説明へ。
開催期間は、オンラインによる静的審査が9月3日~9月6日で車検/動的審査が9月9日~9月14日。
昨年より2週間ほど後の開催だが、全体的なスケジュールは例年通りのようで、動的審査への一般来場も10日から受け入れていくようだ。
参加チームは、国内外から106チームがエントリー。
昨年の90チームから16増えており、新型コロナによる休止前の活況を取り戻しつつある。
自動車技術会が推進する EV クラスへのエントリーも増加傾向となっており、それを踏まえてか、 ICV (ガソリンエンジン車)クラスとEVクラス混合で決める総合優勝、総合順位は今年で廃止。
来年は海外の学生フォーミュラ大会と足並みを揃えるため、クラス別による総合優勝を決める規則へ変更されるという。
EVによるICV超え総合優勝を狙うのは、今年が最後のチャンスとなる。
最大の見どころとなる新会場だが、動的審査が行われるのは屋内展示ホール横の多目的利用地。
さらに展示ホールEとFのスペースは、チームのピットエリアやスポンサー企業、愛知県、静岡県のPRブースとして使われる。
これまでは屋外だったため風雨にさらされる事も日常茶飯事だったが、屋内となった事でそうした苦労も無くなりそうだ。
また周囲に民家がない人工島である事、24時間営業の中部国際空港が隣接している事、徒歩圏内に宿泊施設がある事もメリットになりそうだ。
例えば、近隣への騒音の心配はせずに済むし、許されるなら遅い時間での作業も可能となってくるだろう。
チームや関係者の睡眠不足や疲労の軽減にもなるし、体調不良者が出たら宿泊施設へ休ませに戻る事もしやすくなる。
デメリットは、コンビニや食事の出来るところが空港や宿泊施設に限られる事。
急な部品や工具の調達、修理、急なタイヤ交換を迫られた場合は島外に出なければならず、その選択肢も限られている事があげられる。
チームも関係者も、今まで以上に事前準備をしっかり行う必要がありそうだ。
さて、公開記者発表恒例となったチーム紹介だが、今回の会場には N.I.T.FormulaProject (名古屋工業大学)と TUT FORMULA (豊橋技術科学大学)が本番マシンを展示。
さらに Formula Team FEM (名古屋大学)と、オンラインで Tohoku University Formula Team (東北大学)、NATCK-F (日産京都自動車大学校)が参加。
全て EV クラスで固められた。
【Formula Team FEM (名古屋大学)】
4輪インホイールモーターとトルクベクタリングという独自のEVシステムで、ICVクラスの牙城を崩し始めた強豪チーム。
数年前にはカーボンモノコックを導入して車体面も大幅強化。
その結果、昨年はアクセラレーションで日本新記録を叩きだすなど、EVによる初の総合優勝が目前になってきた。
今年は新型バッテリーの搭載とダイレクト・ヨー・コントロールの開発、回生エネルギーの利用など開発、最適化し、悲願達成を狙っていく。
「カーボンモノコックと独自のEV機構との組み合わせは、国内唯一のものとなっています。もし会場に来られた際は、そんな唯一無二なマシンとその走りをご覧頂けたらと思います」
【N.I.T.FormulaProject (名古屋工業大学)】
2019年に総合優勝を果たすなど、優勝候補に数えられる本チーム。
EV コンバート初年度となった昨年を初完走で終え、地力の高さを見せつけてきた。
今年は抑えていた出力を上げ、各部のぜい肉を削ぎ落とした脅威の軽量マシンで挑む。
目指すは総合優勝ただ一つ。
「ICVクラスの時代からシンプルなパッケージと、そこから生まれる旋回性能の高さが弊チームの強みとなっています。その強みをEVでも生かし、同様のパフォーマンスをお見せできるよう、大会に向けて仕上げていきたいと思います」
【TUT FORMULA (豊橋技術科学大学)】
学生フォーミュラ日本大会で初のカーボンモノコックを採用するなど、新技術へのチャレンジにも意欲的な同チーム。
技術面で高い評価を得られていたが、近年は動的審査への進出、完走を果たせないなど不運が続いていた。
それだけに今年にかける意気込みは強く、”低伸弾道”をテーマに開発した軽量、低重心なマシンで今大会に挑む。
「テーマのイメージにある通り、他チームより車高の低さを意識したマシン作りを行っています。動的審査の全種目完走はもちろんの事、車高の低さを生かした速さをお見せできたらと思います」
【Tohoku University Formula Team (東北大学)】
発足当初からEVクラスへの参戦を続ける東北の古豪。
ここ数年は動的審査で結果を残せていないものの、過去にはクラス上位へ食い込みなど結果を出し続けており、総合優勝を視野にいれたマシン開発を行った経験もある。
試走会でのテスト参加をはじめ、今年はフォーミュラe日本大会での車両展示に協力するなどPRにも積極的で、今度こそ動的審査全種目の完走をと意気込んでいる。
東北大学 澤野さん:
「目標達成に向けてチームの雰囲気はとても良いです。大会ではマシンはもちろんの事、我々メンバーの笑顔、楽しんでいる姿、雰囲気を多くの方に見て頂ければと思います」
【NATCK-F (日産京都自動車大学校)】
関西では数少ないEVクラスのチーム。
参戦初年度からEVマシンの開発を続けてきたが、昨年待望の動的審査進出を果たし、貴重なデータを得る事が出来た。
今年はエンデュランスでの完走を目指すべく、データを生かした各部の見直しとドライバーポジションを最適化したマシンで挑む。
日産京都自動車大学校 及川さん:
「幣チームのマシンには日産リーフのモーターが使われており、ボディカラーも日産オーラなどに採用されているステルスグレーを使う予定です。そんな日産色を全面に出したマシンをぜひ見て頂きたいです。」
会見終了後、動的審査エリアとなる路面を見てきた。
昨年までのエコパと比べて舗装が綺麗でコンディションは良さそう。
だが公開記者発表で披露されたスカイエキスポ仕様のシミュレーターを試してみたところ、路面からの強いキックバックが感じられた。
今までに以上に、各マシンの足回りが試される場となるかもしれない。
【取材・文】
編者(REVOLT-IS)
【取材協力】
公益社団法人自動車技術会