デカップルド パワーブレーキ – 次世代車へ向けたボッシュの新たな提案
デカップルド とは直訳すると 切り離された、分離したといった意味だが、人とくるまのテクノロジー展2024にてボッシュジャパンが提案したデカップルドパワーブレーキはその名の通りのもので、所謂ブレーキバイワイヤーシステムに相当する。
ブレーキバイワイヤー自体、名称は違えどいくつかの車種で採用事例があるが、デカップルドパワーブレーキはそれをさらに進化させたものとなっており、通常時、ブレーキ装置とペダルが 完全に 切り離された状態で制御される事を特徴としている。
一般的なイメージとしてブレーキは、踏んだぶんだけ強く効くだが、このようなシステムは、踏んだ時の車の走行状況に応じて、最適な力で効かせる となる。
ペダル踏力を電気信号を介してブレーキ装置に伝えるわけだが、その電気信号をダイレクトに伝えるのではなく、その前に ECUで最適値へ演算されるため、必ずしも踏力=強いブレーキ力とはならない。
一例であげるならブレーキロックだろう。
パニックブレーキ等でロックさせてしまうと危険状況になってしまうが、ECUの制御が介入する事で、そうした状況の回避も可能となってくる。
今回ボッシュが提案するデカップルドパワーブレーキでは負圧は使われておらず、効きはユニット自体でコントロールされる。
搭載されるソフトウェア「ペダルフィールシミュレータ」で様々な効かせ方へチューニングできるため、恐らく今まで通りの踏み方でも、ブレーキブースター有りと同じ状態で制御可能となったのだろう。
それによりシステムの小型化を実現させている。
この事は車種による制約の緩和にも繋がっており、例えばコンフォートカーでもSUVでもスポーツカーでも、同一ユニットで対応可能となる。
今後市場に出てくる車のいくつかで、もしかしたら同じブレーキユニットが採用されている状況もあるかもしれない。
他にも、切り離された構成により、ブレーキ装置で発生する振動がペダルへ伝わらない効果もある。
快適性向上には欠かせない要素のため、こちらも注目ポイントとなりそうだ。
さて、今回展示のモデルは横滑り防止装置ESPと組み合わせており、デカップルドパワーブレーキで作られた圧力でESPを機能させる構成となっていた。
これにより、ブレーキシステム全般だけでなく一輪おきの細かな制御も可能となる。
運転スキルの低いドライバーも、上級者のようなフィーリングが得られるはず。
さらにSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)への取り組みや自動運転との親和性も高いため、より綿密なブレーキ制御へ昇華する事も出来るだろう。
【取材・文】
編者(REVOLT-IS)
【取材協力】
ボッシュジャパン株式会社
公益社団法人自動車技術会