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誰でも気軽に風洞利用を提案するコンパクト風洞 – 人とくるまのテクノロジー展2022

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自動車性能の向上に欠かせない風洞実験だが、設置や維持、利用だけでも時間とコストがかかってしまう。
そんな中、新たに株式会社日本風洞製作所大和製衝株式会社株式会社ニシヤマの3社が、共同でコンパクト風洞試験システムを開発した。
高精度ながら従来より低コスト、容易に設置可能なシステム構成となっており、風洞の利用促進に繋がる可能性を秘めている。

風洞実験といえば大型研究施設を思い浮かべる方も多いだろうが、本システムは、専用開発のコンパクト風洞(AERO OPTIM)とコンパクト風洞天秤(SLIM BALANCE)の2つで完結。
一般的なピットガレージサイズがあれば、どこでも設置できるという。

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コンパクト風洞試験システムの構成
※展示物は1/18スケールの模型

まず風洞(AERO OPTIM)だが、開発したのは福岡に本社を置く日本風洞製作所。
本システムを構築するにあたり、全長約1.5メートルのキューブ状ユニットを開発した。
それには送風、拡散、均一化、整流といった機能が集約されており、用途に合わせて上下左右に連結する事で必要な送風面積が確保できる。
使わない時は、連結を外してガレージや倉庫の隅へ保管できるし、アジャスター付きパレットに載せれば移動も容易。
さらに、様々なオプションの追加やユニット構成の変更という拡張性の高さも売りとなっている。

次に風洞天秤(SLIM BALANCE)。
開発したのは、兵庫に本社を置く大和製衝。
コンパクトかつ手軽さという命題を達成するため、世界最小・最薄クラスとなる天秤台を新たに開発した。
モジュール化でユニット単位に分割でき、それぞれにアジャスターを備える事で、移動、設置、保管も容易に行えるよう設計されている。

コンパクト化に拘るあまり測定精度が低いと使いものにならないが、それもぬかりはない。
まず均一な気流が流れるよう、スプリッタ設計を最適化。
高精度6分力計測機能も備えており、受感部には偏芯スライド調整機構を設ける事で、様々な車種サイズに対応できるよう工夫されている。

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コンパクトながら大型風洞に匹敵する高精度な測定を可能にする。

実際の測定精度だが、共同開発顧問の久留米工業大学 東 大輔 教授のサポートの元、徹底的に磨きこまれている。
その結果、大型風洞と比べてCd値及び抵抗値は約3%小さくなるものの、抗力については双方に線形性があり、外挿予測は十分可能なレベルになっている。
データ再現性もなんと±1/1000程度で、自動車開発での基準も十分満たしたものとなっている。

まさに、日本ならではな製品と言えるこのコンパクト風洞試験システム。
それを可能としたのが日本風洞製作所と大和製衝の高い技術力と、技術開発型商社としてプロジェクトをプロデュースし、まとめあげてきたニシヤマの手腕。
物作り大国日本の衰退も叫ばれる昨今だが、なかなかどうして、まだまだ健在なところもあるようだ。

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GT-Rに千葉のチューニングショップ「トップシークレット」のエアロパーツを取り付けての検証結果など。

そういえばご覧になった方もいるだろうが、2022年1月に開催された東京オートサロンで本システムは一般公開されており、千葉のチューニングショップ「トップシークレット」のエアロパーツを装着した日産・GT-Rを載せてデモンストレーションが行われた。
「トップシークレット」とはシステムの評価試験で何度かエアロパーツ供給を受けた関係があり、そこで得られたデータに代表の永田和彦(スモーキー永田)氏も、良いフィードバックが得られたと大変満足されたという。

CFD(数値流体力学)解析技術の発達で、あるところでは風洞設備を使わない開発が行われたりと、無理に使う必要ないのでは?という声も聞かれる。
実際のところ必要性は高いのだが、開発コストやスケジュールといった理由により、最低限の利用に留められる場合が多い。
だが、このコンパクト風洞試験システムが普及すれば利用頻度が増す事になり、多くの分野で製品開発に磨きがかかるはず。
また一般で利用できる機会が作れるなら、例えばタイムアタック車両のエアロセッティングにも有益だろう。
それだけでなく模型やラジコンカー、スロットカーでも対応できるなら、より幅広い層に喜ばれるだろう。
愛車の空力性能を、仲間と測りあいながら競うといった楽しみ方も生まれるかもしれない。

【取材・文】
編者(REVOLT-IS
【取材協力】
株式会社日本風洞製作所
大和製衝株式会社
株式会社ニシヤマ