自動車シートへ彩と暖かみを!タジマの刺繍機技術
アパレル製品で使われる工業用多頭式刺繍機を開発、製造する名古屋のタジマ工業株式会社。
ここで作られた刺繍機を使えば、今までにない多種多彩な刺繍デザインが縫い付けられると、日本だけでなく世界中で好評を博している。
その勢いはアパレルだけに留まらず、今回紹介する自動車用シートを始め、コンポジットファイバーやヒーター線、家具、靴、バッグ製品への縫い付けまで対応した刺繍機までも開発。
様々な分野でその活躍を見る事が出来る。
写真のシートは、サンプルとして用意されたもの。
刺繍機によって施工されたシート生地を使い、既存のシートをベースに張り替えてある。
一つは、個性的な穴あけ(ドットデザイン)パターンと多色キルティンぐ加工、サテンステッチとビーンステッチを使い分ける刺繍を組み合わせたミックス柄。
もう一つが、見る角度によって穴の見え方が変わってくる透かし工法が施されている。
どちらも従来品にはない個性と高級感があり、このまま設置するだけでも車内の印象は大きく変わりそうだ。
こうした複雑なデザイン施工を可能としたのが、専用開発された刺繍機PAXシリーズ。
そのラインナップは3種類で、まず通気穴とデザインを両立させた美しいドット穴パターンが描けるPAR。
次に、多色縫製と多色刺繍、本革とウレタンの同時縫製とデジタル布押えによる、キルティング加工まで行えるHAR。
そして、PARとHARの機能を一台に集約し、素材の付け替えをする事なく全ての施工が行えるようにしたPAXとなっている。
どれも、デザイン作成を行う専用アプリケーションソフト「DG-S」と連携しており、これまででは難しかった繊細で複雑なデザインが施せる。
修正も画面上で自由自在。
イラストレーターやCADのデータを取り込んで使う事も出来る。
さらに金型製作の必要がなくなるため、製造に際してのコストと時間が大幅削減。
小ロット生産にも対応できるようになった。
ここまで出来るなら、新車向けだけに収まるのがもったいない。
シートだけでなくドア生地にも色々出来そうだし、中古車の内装のレストア、リビルドに加え、カスタムカー向けにオリジナルデザインな内装を織り込む事も考えられる。
刺繍と聞くと、服に模様を縫い付けたりパッチワークを連想しがちだが、タジマ工業の最先端刺繍機技術はその範疇に収まらない。
効率重視や無駄を省こうとするデジタル化が進む時代だが、世界中に刺繍というアナログならではの温かみを提供し、あらゆる生活空間に彩や愛着を感じとってもらいたいと、日々挑戦を続けている。