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広島工業大学 学生フォーミュラチーム訪問 – ものづくりという原点を追及する

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広島工業大学 学生フォーミュラチーム「HIT Formula Project」は、同大学の五日市キャンパスを拠点に、毎年開催される全国大会に向けて小型レーシングカーを設計、製作する活動を行っている。
今回、チームのご厚意でその活動拠点を見学する機会を得た。

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こちらが普段活動している部室。
前の廊下にはレーシングカートや過去のマシンフレームが立てかけられており、いかにも車で何か競技をやっているように見える。
ここで面白いエピソードを聞かせてもらった。
マシンは部室内で組み立てられるが、外へ運び出す際にドア枠や扉枠に干渉しないよう考慮しなければならず、そのため全幅、トレッド幅に制約を受けた状態で設計しなければならないようだ。

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室内はなかなか広い。
工具や備品、過去に制作した部品なども整然と置かれているが、それでもデスクやマシンの作業スペースも十分すぎる広さがある。

現時点でメンバーは18名ほど。
驚いたのが各部品の内製率で、その割合は100%に近い。
もちろん、衝撃吸収構造体であるインパクトアッテネーターもそれに含まれている。
他チームでは設計はするものの、工程の短縮や信頼性の向上、車検や各審査でのリスクを軽減するため、スポンサー企業へ製造を依頼するところや、既製品を購入するところも多い。
内製が多くなると一見、手間と面倒が増えるだけのように思うが、チームは学生フォーミュラの趣旨、基本方針に忠実に沿う事を掲げており、あくまで自分達自身のものづくりで勝負したいと考えている。

【趣旨】
主役である学生が自ら構想・設計・製作した車両により、ものづくりの総合力を競い、産学官民で支援して、自動車技術ならびに産業の発展・振興に資する人材を育成する。
【基本方針】
学生にものづくりの機会を提供することにより、「学生の自主的なものづくりの総合力を育成する」、「学校教育と連携する実践的な学び場としての教育的価値を高めていく」事とする。

公益社団法人自動車技術会の学生フォーミュラ公式サイトより引用

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2024年大会を戦ったマシンを見せて頂いた。
先にも書いた通り全幅、トレッドの設計に制約を受ける関係か、全体的に細長い印象を受ける。
ちなみに昨年型で他と比較したところ、このようになっている。

【全幅】※
広島工業大学:1,270mm(全チーム最小)
ものつくり大学:1,635mm(全チーム最大)
京都工芸繊維大学:1,465m(総合優勝)
【フロントトレッド】※
広島工業大学:1,063mm(全チーム最小)
ものつくり大学:1,447mm(全チーム最大)
京都工芸繊維大学:1,250m(総合優勝)
【リアトレッド】※
広島工業大学:1,063mm
ものつくり大学:1,437mm(全チーム最大)
京都工芸繊維大学:1,250m(総合優勝)
【ホイールベース】※
広島工業大学:1,563mm
Jilin University(中国):1,850mm(全チーム最大)
名古屋大学:1,530mm(EVクラス優勝)

※公表値で比較、非公表は対象外

一概にどれが正解とは言えないが、これだけバラつきあるマシンが同じフィールドで競いあうのも学生フォーミュラの特徴と言える。
設計に際しては、自動車など製造業で用いられている MBD(モデルベース開発)やシミュレーション技術も導入するなど、実践的なアプローチを取っているようだ。

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エンジンは単気筒の KAWASAKI KX450J。
車重は191kgと77チーム中10番目の軽さを誇っている。
興味深かったのが冷却系で、近年は放熱塗料をラジエーターに施工するチームが増えているが、広島工業大学は未施工ながら、独自コンセプトによる設計で水温を90℃近くに抑える事に成功している。
残念ながら、2024大会は動的審査に進めず会場での走行データが取れなかったが、もし今年の大会で一定の成果が得られたなら、他チームも追従する可能性が高い。

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大会では走れなかったものの既に問題は解決。
昨年の12月にかけては、ホームコースのスポーツランド TAMADA で何度か試走を繰り返してデータを収集するなど、活発な動きを見せていた。
今年度に向けては若干設計作業が遅れているものの、昨年型から大きな変更がある事もあり出来るだけ早くシェイクダウンを行い、試走に時間を費やしたいとの事。
果たしてどのようなマシンを披露するのか?
そして今年こそ全種目完走を果たすか?
チームの奮闘に期待したい。

【取材・文】
編者(REVOLT-IS
【取材協力】
HIT Formula Project(広島工業大学)