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京都工芸繊維大学の挑戦 - 学生フォーミュラ2022チームプレイバック京都工芸繊維大学の挑戦 - 学生フォーミュラ2022チームプレイバック

公開日
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京都工芸繊維大学の学生フォーミュラチームGrandelfinoが制作したマシン。
3年ぶりなリアル開催が叶った”学生フォーミュラ”。
物作りを学ぶ学生達の”甲子園”とも言うべき本大会へ各チームどのように臨み、どのような結果が得られたか?
今回は京都工芸繊維大学からエントリーの学生フォーミュラプロジェクト”Grandelfino(グランデルフィーノ)”をピックアップしてみた。

チーム創立は2005年。
学生フォーミュラへは2007年から参戦を続けており、これまで2012年、2016年、2017年の各大会で総合優勝を果たしている。
今年の陣容は人数が66名ほどで、うち学部生が42名、院生が24名程度。
主に2年、3年で構成された約30名のメンバーが設計製作に携わっており、その過程で疑問や質問、成果物のチェックやアドバイスを先輩がたに求めていく体制が取られている。

ではGrandelfinoが製作した学生フォーミュラマシンを見ていこう。
17代目とマシン”GDF-17”の開発コンセプトは、”旋回性能への挑戦と更なる出力の向上”。
主要部分を見ていくと、軽量化と低重心化に徹底的に拘っている様が伺えた。
リア駆動系とサージタンク、リアダンパーのアップ
リア駆動系とサージタンク、リアダンパーのアップ

まずエンジンはヤマハのバイクYAMAHA MT-07用を搭載。
チェーンドライブとDREXLER製LSDを組み合わせた駆動系を介して駆動輪に伝達される。

潤滑方式はドライサンプを採用。
これまでのウェットサンプではオイルパンをリア底部に設置していたが、ドライサンプ化にあたり独立したオイルタンクをサイドへ設置。
同時に純正オイルパンから自作の薄いオイルパンへ変更がなされている。
これによりエンジン搭載位置を下げる事ができたが、市販エンジンを弄った事による信頼性や、エンジン搭載位置を下げた事によるフレーム側に不安があったため、これでいけるかを判断する会議が長期間行われたという。

サージタンクは今回から3Dプリンタで制作。
設計通りの性能を発揮しているが、横から吸気をする方式にした事で重心も下げられている。
GrandelfinoのマシンGDF-17の全景
GrandelfinoのマシンGDF-17の全景
フロントダンパーのアップ
フロントダンパーのアップ

フロントバルクヘッドにはハニカム構造のIA(Impact attenuatorの略、いわゆる前方からの衝撃を減衰される構造物)を搭載。
ダンパーはKW製で、チームのリクエストに合わせてリザーバータンクを横付けした全長の短いモデルを制作。
これにより、フロントとリアバルクヘッドの小型化と軽量化を達成している。
フロントのプルロッドサスペンションとサイドポンツーン
フロントのプルロッドサスペンションとサイドポンツーン
リアはプッシュロッドサスペンション
リアはプッシュロッドサスペンション

足回りだが、ブレーキはアウトボートタイプながら、マググネシウムホイールの採用でバネ下重量を低減。
そしてサスペンション周りには、カーボン製のサスペンションロッドが取り付けられている。
これは、チームからの積層数、積層角度のリクエストを受けてホーペックが制作したもので、これも軽量化の一貫
まずは荷重の少ない箇所からの採用となっているが、問題のない事が確認出来次第、来年度以降、段階的に採用箇所を増やしていくという。
コクピットのアップ。 パドルシフトも見える。
コクピットのアップ。
パドルシフトも見える。

コクピットにはパドルシフトの付いたカーボン製ステアリングが見える。
ステアリングシャフトもカーボン製だが、こちらはチーム内製。
150℃~200℃まで温度をあげられる窯を独自に制作しており、様々な試作パーツを制作する環境が整えられている。
リアセクション
リアセクション

エアロデバイスや吸気パーツは、CFD解析と実測値を合わせる事で設計。
前述のバルクヘッドの小型化でボディ全体が洗練されており、細部もフェアリングを設けるなど、フロントからリアへ流れる気流の制御に拘りが感じられた。
またリアウイングのフラップは傾きを調整できるため、競技に合わせた最適なエアロセッティングがなされるよう工夫されている。

では大会結果を見てみよう。
事前に行われた書類提出、シェイクダウン証明提出、オンラインによる静的審査、動的審査では以下の結果となった。

ESA/ESO, SES, IAD, ESF, and FMEA:ペナルティ無し
デザイン審査:1位
プレゼンテーション審査:1位
コスト&製造審査:1位
シェイクダウン証明:承認
アクセラレーション:2位
スキッドパッド:1位
オートクロス:1位
エンデュランス:1位
燃費:7位
総合:1位
総合優勝したGrandelfinoチーム
総合優勝したGrandelfinoチーム

もはや圧巻と言える成績で5年ぶりに総合優勝を奪還。
さらに各審査合わせ、以下の各賞を受賞している。

経済産業大臣賞
掛川市長賞
袋井市長賞
日本自動車部品工業会会長賞
ICV総合優秀賞
コスト賞
デザイン賞
プレゼンテーション賞
スキッドパッド賞
オートクロス賞
加速性能賞2位
耐久走行賞
ベストエアロ賞 2位
エルゴノミクス賞 3位
ジャンプアップ賞

この成績に至るまでの静的審査と動的審査について伺ってみた。
※取材したのはデザインファイナルとエンデュランス出走前

まず静的審査についてだが、チームとしては予想以上の結果だった様子。

デザイン審査では、今年からデザインブリーフィングという形式になり、従来よりも内容の濃い資料が提出できるように。
その対策として3回生の8割をデザイン担当として割り振り、4ケ月ほどかけてメンバー間で相談し合いながら資料を作成していった。
その成果が実を結び、デザイン審査トップ3で競うデザインファイナル審査に初進出。
そのデザインファイナルでは、同じく進出した大阪大学と接戦になるものの、多くの審査員から高い評価を得られたGrandelfinoが初の1位を得る事となった。

コスト審査では主に正確さを追求。
3回生が主体でコストを統括。1~2月でスタート、2回生にも動いてもらいながら書類を作成していった。
減点も少なく、狙い通りの正確さが評価されたため手応えを感じていた。

プレゼン審査はこれまで弱いと言われていた項目だけに、今年は好成績を狙って対応する人員と時間を増やす事に。
その効果は大きく、より密度の濃い考え方で内容をまとめられたため、本番に向けてしっかりした準備を行えたという。
その成果が初の1位獲得となって表れた。
エンデュランスを快走中のGDF-17
エンデュランスを快走中のGDF-17

動的審査については、不安定な天候で走るタイミングを見計らうのが難しかったが、午前中にオートクロス、スキッドパッド、アクセラレーションで一定のタイムを出しておき、後半にエースドライバーを投入してアタックをかける戦略で臨んだ。

その午前中では平均して良いタイムを記録。
予定通りエースドライバーに思いっきり攻めてもらえる状況が作れたが、これが好結果に繋がったようだ。
ベストタイムは全て後半で記録しており、アクセラレーションでは僅差で2位となったものの、スキッドパッド、オートクロスは全て1位を獲得している。

エンデュランスでは、ドライサンプ化でエンジンに不安があるため完走を第一に考えたいと語っていたが、オートクロスの成績からもマシンに強い信頼を寄せており、完走できれば結果はついてくるだろうという思いを持たれているようだった。
果たして結果は、最後まで次元の違うスピードと安定感で周回を重ね、時に相手チームを周回遅れにしそうな勢いも見せつつフィニッシュ。
見事1位を獲得してみせた。
撤収作業中のGrandelfinoチームの面々
撤収作業中のGrandelfinoチームの面々

F1でいう、一昨年までのメルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラワン・チームのような圧倒的な勝ち方で総合優勝と多くの賞を勝ち得たGrandelfino。
一部では勝って当たり前な声も聞かれたが、総合優勝できた秘密は3年前に遡る。

Grandelfinoでは、コロナ過が始まった2019年くらいに総合優勝に向けた3年計画を策定。
そこには3年後の優勝を現実的な目標とし、では優勝するためには何をすればいいか?何が必要か?それを達成するにはどのような車両諸元が必要か?を論理的に、具体的に考えたプランが練られていた。
そして、その実現に向けてチーム全員で協力し合い、先輩から後輩へのバトンもしっかり繋いできた。

もちろん、コロナ過での大会開催が不透明で修正はあっただろうし、不確定要素やつらい状況も多々あったはず。
チームメンバーはじめ、歴代チームリーダーのプレッシャーはかなりのものだっただろう。
それでも今日まで挫けず、学生フォーミュラ審査員一同も納得のフォーミュラマシンを作りあげてみせた。

ところで本大会に参加した多くのチームでは、静的審査資料とマシンコンセプトとの乖離、先輩から後輩への引き継ぎや経験不足が見られ、審査員からも厳しい指摘があった様子。
思うに目標やチーム作りを目先の材料、資産だけで考えていたり、マシン制作が一番上で、静的審査は後付けでそれっぽい理由をこじ付けようとしていないだろうか?

わかりやすさからか、競技性やモータースポーツの面を強く押し出される学生フォーミュラ。
しかし、今回の取材を通して感じたのは、学生フォーミュラとは企業の製品開発フローを追ったものだという事。

製品企画から市場マーケティング、開発チーム作り、プレゼンやミーティング、スケジュール作り、デザインやコストの検討会議、設計、試作を含めた製品開発、製品試験、本番リリースといった行程が思い起こされるが、審査員の指摘からは、本来ならこういうステップを踏んで来て欲しいし、これが出来ていれば静的審査も矛盾なく行えるはず、と言っているように思えた。
そしてこれをやっていたのが総合成績の上位チームであり、しっかり出来ていたと評価されたのがGrandelfinoだったのだろう。

成績をもっと向上させたいと願うチームがいるなら、まずこうした上位チームの取り組みを学んでみてはいかがだろう?

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